新型肺炎、専門外来800カ所に 国内の医療体制拡充
中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎で、国内の感染者が増えるなか、政府は対策の重点を水際の封じ込めから医療体制の整備に移す。感染の疑いのある人を診察する専門外来は2009年の新型インフルエンザ並みの800カ所に拡充する。重症者向けの病床の確保も急ぎ、感染者の急増に備える。
03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の際は検疫の強化など水際対策も奏功し、結果として国内の患者発生を防いだ。一方、09年の新型インフルではウイルスの侵入を防ぐことができず、国内で推計約2000万人の感染者が発生した。新型肺炎も感染拡大の可能性が高まっており、政府は患者の早期発見・治療の体制を強化する方向にかじを切った。
厚生労働省は、感染を疑った場合にいきなり医療機関で受診するのではなく、全国536カ所の「帰国者・接触者相談センター」に電話するよう求めている。相談センターは感染の疑いありと判断すれば全国726カ所の「帰国者・接触者外来」を紹介する。
厚労省は今後、相談センターの電話回線を増やし、24時間対応とする方針。専門外来は新型インフル流行時と同水準の約800カ所まで増やす。
新型インフルの際は政府が設置した「発熱外来」に、風邪などで熱が出ただけの患者も多く押し寄せた。このため専門外来は原則非公表とし、相談センターから紹介する形にしている。
感染が疑われる状況としては、強い倦怠(けんたい)感や呼吸困難が続くなどの状況が想定されている。高齢者、糖尿病や心不全などの持病がある人、免疫抑制剤や抗がん剤などの治療を受けている人は重症化リスクが高いとされる。
感染症法の指定医療機関に整備された「感染症病床」は全国に約1800しかなく、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の患者受け入れなどで、既に数百人分が使用中となっている。このため厚労省は、感染症病床に準じた設備を持つ「新型インフルエンザ病床」(全国約1600床)などの使用も想定している。
現時点で新型肺炎にはインフルエンザのような専用の治療薬がなく、重症化しても通常の肺炎と同様の対症療法が中心となる。一部の薬が効く可能性も報告されているが、臨床試験などを行っておらず、効果や副作用は分かっていない。
武漢市では医療機関がパンク状態になり、重症者に適切な医療が提供できなくなった結果、死者が多発する事態を招いたとされる。
厚労省は感染拡大のペースを落とすため、空港などでの水際対策や、感染者周辺の濃厚接触者の経過観察も継続する。ただ、新型インフルでは初期段階で健康監視の対象が約13万人に膨れあがり、保健所がパンクした。同じ轍(てつ)を踏まないために、国内の追跡調査の見直しも求められる。
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2023年5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行しました。関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。
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