中国、東シナ海でも軍事演習 3海域同時で影響力誇示
【北京=羽田野主】中国国営中央テレビ(CCTV)は5日までに、人民解放軍が南シナ海だけでなく東シナ海と黄海でも軍事演習をしたと伝えた。3海域同時の演習は異例だ。米国との対立の深まりを受け、同海域での影響力を誇示する狙いがあるとみられる。
CCTVは東シナ海を所管する東部戦区の海軍がミサイル駆逐艦を投入し、軍用ヘリコプター2機と連携して正体不明の船舶を拿捕(だほ)する様子を伝えた。台湾や沖縄県の尖閣諸島(中国名・釣魚島)を意識している可能性がある。
黄海を所管する北部戦区では護衛艦が海上の目標に向かって実弾射撃訓練する場面を伝えた。南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島の海域でも1~5日まで船舶の航行を禁止し海上の射撃訓練をすると通告している。
国営メディアは「三大戦区で大演習だ」と誇示した。中国の軍事関係筋は「米国やインドなどと緊張が高まり、国内で不安視する声が広がっている」と話す。
南シナ海では中国の演習と同時期に米軍が原子力空母2隻を派遣し、大規模な軍事演習を実施している。
米中が同時期にそれぞれ実施するのは異例で、同海域での緊張拡大が鮮明になった。中国としては対外的に強い態度を示して国内の不満をそらす狙いも透ける。
対米外交を巡っては6月に中国外交担当トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)中国共産党政治局員がハワイの米軍基地を訪れた。ポンペオ米国務長官との緊張緩和を巡る協議は平行線に終わったとみられている。
中国の香港への統制を強める香港国家安全維持法の制定を受け、日米欧は反発を強めた。
米上院本会議は7月2日、香港の自治の侵害に関わった中国共産党員や金融機関への制裁を可能にする「香港自治法案」を全会一致で可決した。
自民党の外交部会などは3日、延期している習近平(シー・ジンピン)国家主席の国賓来日を中止するよう政府に求める決議案をまとめた。
習指導部は中国で新型コロナウイルスのまん延がピークを越えた3月以降、海洋進出を活発化させてきた。
海上保安庁は7月5日、尖閣周辺で4日に領海侵入した中国海警局の船2隻が5日夕まで領海内にとどまっていたと明らかにした。3日に記録した30時間17分を超え、2012年の尖閣国有化以降で最長を更新した。
中国外務省の報道官らはオーストラリアやカナダなどに対しても挑発的な言動をする「戦狼外交」を繰り広げる。
北京の外交筋は「中国が緊張をつくり出し他国の反発を受けてさらに強硬になるという悪循環だ」と指摘する。
3期目となる新たな習近平(シー・ジンピン)指導部が発足しました。習政権では習氏に近いとされる「習派」は最高指導部を指す政治局常務委員で7人中6人を占め、序列24位以内の政治局員でも約7割が該当するとみられます。権力の一極集中を進める習政権の最新ニュースや解説をまとめました。
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