豪、太平洋島しょ国に温暖化対策350億円 中国浸透警戒
【シドニー=松本史】オーストラリアのモリソン首相は13日、地球温暖化による海面上昇などへの対策のため、太平洋の島しょ国に5億豪ドル(約350億円)を拠出すると発表した。豪州は開発援助を通じて地域に影響力を増す中国への警戒を強めている。島しょ国最大の懸案である気候変動への支援を打ち出し、地域にアピールする狙いがある。
13~16日に南太平洋のツバルで開かれる太平洋諸島フォーラム(PIF)で、モリソン氏が詳細を明らかにする。PIFは島しょ国に豪州やニュージーランド(NZ)などを加えた16カ国と2地域が参加し、地域の政治や安全保障について話し合う場だ。中国も域外国として代表団を送っており、近年豪中のせめぎ合いが陰のテーマとなっている。
豪州は太平洋諸国を支援する「ステップアップ政策」を掲げ、2018年に20億豪ドルのインフラ支援ファンドを設立した。今回の5億豪ドルは同ファンドから拠出し、再生可能エネルギー設備の普及や護岸の整備に充てるとみられる。
今年のPIF議長国ツバルは、海面上昇による水没の危険性が指摘される。キリバスやマーシャル諸島も同様で、気候変動がフォーラムの主要な議題となる見通しだ。モリソン氏は13日、PIFに向け出立する前に声明で、資金拠出に関して「我々は太平洋のパートナーと共に、彼らが向き合う課題に取り組む」と強調した。
一方、中国は豊富な資金力をテコに地域で影響力を強めている。サモアで港湾開発を手掛け、バヌアツに軍事基地建設を計画するとの報道がある。中国からの債務が膨らみ返済期限の延長を打診したトンガは、中国が進める広域経済圏構想「一帯一路」に協力する覚書を交わしたとされる。
豪州はこうした中国の動きに警戒感を強めており、PIFで気候変動対策に加え、島しょ国に安保協力などさらなる連携を働きかけるとみられる。ただ、島しょ国からは、発電時に二酸化炭素(CO2)を多く排出する石炭の生産・輸出を続ける豪州に対し、温暖化への取り組みが足りないと非難が出る可能性がある。