アマゾン、外部事業者のデータをPB開発に不正利用か 米紙報道
【シリコンバレー=白石武志】米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は23日、米アマゾン・ドット・コムのプライベートブランド(PB)商品の開発担当者らが同社のネット通販サイトで扱う外部事業者の競合商品の販売データを利用していたと報じた。事実であればアマゾンの社内規定に違反する。報道を受け、同社は内部調査を始めたと明らかにした。
WSJは20人超の元従業員へのインタビューや独自に入手した内部資料などを元に、アマゾンのPB商品の開発担当者らが外部事業者の販売データを習慣的に入手していたとしている。競合商品のデータはアマゾンがPB商品に取り入れる機能や価格設定、収益性の分析などに役立てられていたという。同社は外部事業者の固有の販売データを自社のPB商品の開発に利用することは社内で禁じている。
例えばアマゾンが2019年に発売した自動車向け収納関連のPB商品の開発では、同社の従業員らが外部事業者が販売する同じ分野のベストセラー商品について売上高や販売促進費、配送費などのデータを入手していたという。WSJはアマゾンの社内会議でもこうしたデータを使った議論が公然と行われたとしている。
アマゾンの広報担当者はWSJの報道で指摘された商品のデータには別の商品も含まれ、特定の外部事業者固有のものではなく、集計されたものであることは確信を持って言えるとしており、問題はなかったとの認識を示している。元従業員らの証言については「主張が正確であるとは考えていない」としつつも、「申し立てを非常に真剣に受け止め、内部調査を始めた」とコメントした。
アマゾンのネット通販サイトでは自社の商品と外部事業者が出品する商品を並行して扱っており、外部事業者にとっては競合する商品の販売データがアマゾン側に筒抜けとなるリスクがある。アマゾンは外部事業者が安心して同社のネット通販サイトに出品できるよう、同社が外部事業者の販売データを使って競合することはないと対外的に説明してきた。
仮にアマゾン社内でこうした約束を破る行為があったとすれば、公正競争に関する前提が揺らぐおそれがある。アマゾンやアップルなど「プラットフォーマー」と呼ばれる米ネット大手に対し米独禁当局が進める調査や、米議会の間などでくすぶるネット大手の分割論などに影響する可能性もある。