いじめ認知、最多41万件 小中高校17年度28%増
文科省調査
全国の小中高校などで2017年度に認知したいじめが過去最多の41万4378件だったことが25日、文部科学省の問題行動調査で分かった。16年度から9万1235件(28.2%)増えた。早期対策のため、同省が軽微なものでもいじめと捉えるよう促しているためとみられる。いじめが原因で10人が自殺するなど、深刻な事例は無くなっていない。
小学校の認知件数は31万7121件で全体の76.5%だった。中学校は8万424件、高校は1万4789件。同省は「ささいな事案も積極的に『いじめ』とする姿勢が学校に浸透してきた」とする。
いじめの認知は11年の大津市の中2男子自殺を契機に進んだ。13年にはいじめ防止対策推進法が成立し、いじめの定義が拡大。同省は17年3月に方針を改定し、けんかやふざけ合いでも、生徒が被害を感じている場合には、いじめとするよう求めた。
都道府県別の認知件数の差は縮まりつつあるが、認知が0件だった学校もある。同省は「見逃している可能性があり懸念される」とした。
生命や心身への重大な被害、不登校につながった可能性がある「重大事態」は16年度比78件増の474件だった。
小中高の児童生徒で自殺したのは250人で16年度から5人増えた。小学校は6人、中学校は84人、高校は160人。原因は「不明」が140人で一番多く、いじめは10人だった。
小中高における暴力行為の発生は6万3325件で過去最多。小学校で7年連続増えており、中高は減少傾向にある。
▼ネットいじめ急増
今回の問題行動調査で、いじめの種類別ではインターネットや交流サイト(SNS)の誹謗(ひぼう)中傷が1万2632件と過去最多を更新。表に出にくいネット上のいじめに、学校や企業が対策を進めている。
埼玉県越谷市立平方中学校は6月の道徳の授業で、批判的なコメントが殺到する「炎上」を疑似体験するカードゲームを使った。各自が紙に書いた意見に、相手をけなす言葉が書かれたカードを出し、10枚集まると負け。大西久雄校長は「座学よりもトラブルを身近に感じられたのでは」と話す。
写真共有サイト「インスタグラム」は5月、個人へのいじめと捉えられるコメントを自動で非表示にする機能を導入。保護者向けのガイドも公表し、子供がサイト上でいじめを受けている場合の対処法などを紹介した。
千葉大学の藤川大祐教授(教育方法学)は「ネットでは多くの場合、悪口は軽い気持ちで書かれるが、中傷を目にした生徒は大きなショックを受ける」と指摘。「教員はいじめを認識したらすぐに管理職に伝え、組織的に対応すべきだ。教員1人が抱え込むと事態を軽く見る危険がある」としている。