米、香港デモで中国揺さぶり 貿易交渉進展へ思惑も
【ワシントン=中村亮】トランプ米政権が香港で続くデモを巡り、中国政府に揺さぶりをかけている。13日には中国政府が香港との境界に部隊を派遣したと指摘し、武力介入への警戒をにじませた。中国で強権的な統治を続ける習近平(シー・ジンピン)政権の影響力拡大を懸念し、人権や自由を尊重してきた香港の行方に神経をとがらせる。人権問題で圧力を強め貿易交渉の進展につなげる思惑もありそうだ。
トランプ大統領は13日、中国政府が香港に隣接する広東省深圳市に部隊を派遣した様子とする動画をツイッターで引用し「みんな冷静になり、安全が確保されるべきだ!」と強調した。滞在先の米ニュージャージー州では記者団に対し、デモについて「死傷者が出ないことを望む」と強調した。中国がデモ鎮圧に向けて、武力介入に踏み切らないよう自制を促す狙いがあったとみられる。
米政権は中国を、民主主義と相いれない「修正主義勢力」とみなしており、習政権が香港に影響力を強めている事態を懸念してきた。米政府高官は「言論や集会の自由は我々が香港の人々と共有してきた中核的価値観だ」と指摘した。「さまざまな政治的価値観が尊重されてこそ社会は最も良く機能する」と強調し、民主主義的な抗議活動も封じかねない中国政府に懸念を示した。
米議会は香港の問題により強い関心を示す。野党・民主党のペロシ下院議長は12日、デモ隊について「一国二制度の維持を試みている」とツイッターで評価した。香港政府トップの林鄭月娥行政長官に対してデモ隊と対話し、警官隊による暴力停止や一人一票を投じる普通選挙を実現するよう求めた。与党・共和党のマコネル院内総務も「暴力による(デモの)鎮圧は全く容認できない。世界が注視している」と中国政府をけん制した。
トランプ氏には、中国が最も敏感な人権問題で揺さぶりをかけて貿易交渉を有利に進める狙いもありそうだ。13日も貿易問題をめぐる米中閣僚の電話協議を「とてもすばらしかった」と評価した直後に「中国は香港で問題を抱えている」と突然指摘した。香港問題を貿易交渉のカードとみなしている可能性がある。
トランプ氏は人権問題に関心が高いとは言いがたい。香港のデモに関してもこれまでは「円満に解決することを望む」などと述べ、深入りを避ける意向をみせていた。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長とも個人的な関係の構築を優先し、人権問題の解決に取り組む姿勢を強くは示していない。
一方、中国政府は米政権による香港問題への介入に神経をとがらせている。米政府関係者によると、中国政府は米海軍の輸送揚陸艦「グリーン・ベイ」などの香港寄港を拒否した。中国は米国がデモをあおっているなどと主張しており、寄港拒否には米国に反発する姿勢を明確に示す意図がありそうだ。
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ドナルド・トランプ元アメリカ大統領に関する最新ニュースを紹介します。11月の米大統領選挙で共和党の候補者として、バイデン大統領と再び対決します。「もしトラ」の世界はどうなるのか、など解説します。