ベトナム石炭火力、環境相「再検討」で波紋 既存計画多く
日本企業が主導するベトナムでの石炭火力発電所の建設計画について、小泉進次郎環境相が24日、再検討を訴えた。米国と中国の企業が建設を請け負うことに疑問を呈しているが、プロジェクトには国際協力銀行(JBIC)などが融資を検討している。国際的に批判が強まる石炭火力を巡る問題であるだけに、政府内にも波紋が広がっている。
「輸出すれば30年以上、相手国の政策をロックしかねない」。24日の閣議後の記者会見で、小泉氏は日本企業がベトナムで予定している石炭火力発電所の建設計画についてこう主張した。
石炭火力は他の電源に比べて二酸化炭素(CO2)の排出量が多く、地球温暖化対策の点で批判が強まっている。日本は大半の原子力発電所が停止して石炭への依存が強い。一方で石炭火力の中では発電効率が高い超々臨界圧(USC)の技術で先行し、世界に売り込む立場にある。
ベトナムのプロジェクトは三菱商事が主導する。発電所の設計・調達・建設は米ゼネラル・エレクトリック(GE)と中国のエンジニアリング会社が受注した。
政府は石炭火力の海外輸出にあたって4つの要件を定めている。そのうちの1つが「相手国から日本の高効率石炭火力発電への要請がある」ことだ。小泉環境相はベトナムの案件ではこの点も問題視しているようだ。三菱商事は24日、小泉氏の発言について「個別案件にコメントできない。関係省庁の議論を見守る」とした。
政府内には困惑が広がる。閣僚が問題視すれば、主導する日本企業は慎重にならざるを得ない。経済産業省では「日本が引けば、中国などが代わりに出てくるだけ」との声もある。発電所の開発は日本とベトナムの結びつきを強める案件でもあるだけに、異論には神経質にならざるを得ない。
海外で日本企業が関わる石炭火力は他にもある。住友商事はベトナム南部のバンフォン地区で出力132万キロワットの発電所を2023年に稼働する。丸紅はインドネシア中部のチレボン石炭火力発電所に参画し、伊藤忠商事はインドネシア中部のバタンでの事業に出資している。
各社は18~19年には新規の石炭火力開発はしない方針を示している。だが、その前に動き出した案件は多い。政府の閣僚の発言で世界的な視線がまた厳しくなれば、今後の資金調達などへの支障が懸念される。
小泉氏が言及したベトナムのプロジェクトにも、海外の金融機関では融資から距離を置く動きがある。日本の政府内で足並みが乱れれば、日本勢が主導するプロジェクトに影を落とすことになる。