中国のもう一つの憂鬱 「未富先老」迫る
論説委員長 原田 亮介
中進国の罠、どう回避
米中首脳会談が4月にも開かれ、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が貿易戦争の回避で合意するとの観測が出ている。実現すれば日本経済にもプラスだが、中国はその先で「中進国の罠(わな)」からどう脱するかという重荷も背負っている。成否は今後10~20年の世界経済の行方も左右するだろう。
中国の国会にあたる全国人民代表大会。李克強首相は5日の政府活動報告で、汗を拭きつつ「経済の下押し圧力が強まっているが、合理的な範囲からはみ出さないようにする必要がある」と述べた。
2018年秋から年初にかけての世界的な株価調整は、米連邦準備理事会(FRB)の連続利上げと中国景気の先行き不透明感が理由だった。
中国では、米国が高率の関税を発動する前に輸出を増やした反動で、18年末にかけて生産が大きく収縮した。日本企業が19年3月期決算で減益に転じる原因にもなった。
李首相は全人代で米政府や議会を刺激する「中国製造2025」に言及せず、貿易摩擦の解消に注力する姿勢を強調した。米中首脳会談の合意を急ぎ、目先の苦境をしのぐのに腐心する演説にみえる。
だがそれに続く発言には習近平体制の別の悩みがにじんでいた。「目前の状況にとらわれて...
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