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国の借金は返す必要があるか(十字路)

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1000兆円にも及ぶ国の借金(国債)は果たして返せるのかという問いに対し、私は強い確信を持って答えられる。絶対に返せないと。借金は借り換えると増えも減りもしないが、借り増すと増え、返済したときにようやく減少する。当然のことだ。

手元にある1985年以降30年間ほどのデータを見ると、我が国の国債残高は一貫して増え続けてきた。ほとんど増えなかったごく短い期間はあるものの、減ったことは一度もない。つまり実質的には我々はこの間、期限を迎えた借金をひたすら借り換え、さらに借り増しをする一方で、返済したことは一度もないということだ。だから国債発行残高が増え続けてきた。

残念だがこの図式は今後も変わらない。今年度の一般会計を見ると、税収等の歳入が63兆円ある一方、政策経費の歳出が74兆円だから、差し引き11兆円の赤字だ。そこに既存の国債の利払い費が9兆円加わって、合計20兆円の借り増しが発生する。借金を減らすには、収支を年間20兆円以上改善させて黒字にしないといけない。少子高齢化が今後さらに進行する我が国で、それが可能とは到底思えない。

しかし実は借金はあってもよい。増えてもよいのだ。大事なのは体力とのバランス。企業でいえば収益力との見合い、国でいえば債務残高を名目国内総生産(GDP)と比べた比率だ。この数値を着実に低下させていけるのであれば、借金は増え続けても問題ないと言える。

言い換えれば借金の増加率を抑える一方、名目経済成長率を十分に高めればよいことになる。そのためのデフレ脱却だとの声が聞こえてきそうだが、順序は逆だ。名目成長は企業活動の成果である所得の増加を意味する。企業が稼ぐ力を高めれば成長率も高まる。デフレが終わるのはその結果に他ならない。

(三菱UFJリサーチ&コンサルティング研究理事 五十嵐敬喜)

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