中国、太平洋「米同盟」切り崩し ミクロネシア接近
【北京=羽田野主】中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は13日、北京市でミクロネシア連邦のパニュエロ大統領と会談した。同国は広域経済圏「一帯一路」構想に参加しており、習氏は会談でインフラ建設など経済支援を表明した。中国は太平洋地域で米国を軸とした同盟の切り崩しに動いており、米グアム領に近く軍事的に要衝の地にあるミクロネシアに接近している。
中国国営の新華社によると、習氏は会談で「力の及ぶ限り、経済技術援助を続けたい」と強調した。「一帯一路の枠組みで貿易投資や農林漁業、インフラ建設などの連携を広げていこう」とも呼びかけた。パニュエロ氏は「貿易やインフラ整備などの協力をさらに前進させたい」と話した。
ミクロネシアは米国の原子力潜水艦や戦略爆撃機が待機する米軍基地グアムから近い。同連邦のヤップ島とグアム間の距離は700キロメートルあまり。米軍の活動する海域にも近い。中国は将来、潜水艦を含む艦艇の展開拠点や補給基地を置いてグアムの米軍と対抗しようとしているとの観測が絶えない。中国はミクロネシアと外交上、接近するだけでも米国をけん制できるとみている。
中国はミクロネシアがパラオやマーシャル諸島とともに米国と締結する「自由連合盟約」の切り崩しを視野に入れる。盟約は米国が3カ国に補助金を配る代わりに、米軍の駐留を受け入れ、他国軍の基地を認めない取り決め。ミクロネシアと米国の期限は2023年までだ。盟約には地元では異論も強い。期限切れが意識される状況は、中国にとって影響力を拡大する好機に映る。
中国は台湾と外交関係を結ぶパラオには硬軟両様で揺さぶりをかけている。2017年には観光ツアーを事実上禁止した。台湾と「断交」して中国と国交を結べば、米国に代わって資金を提供する構えをみせているとの一部報道もある。国際機関太平洋諸島センターによると、マーシャル諸島のハイネ大統領は5月にワシントンで「中国の経済的な影響力で脅かされている」と発言した。
もっとも中国の思惑通りに米同盟国を切り崩せるかは不透明だ。米国のポンペオ国務長官は8月にミクロネシアを訪れ、マーシャル諸島、パラオを含む3カ国首脳との会談で経済・防衛での協力を確認した。ロイター通信によると、マーシャル諸島のハイネ大統領は9月に台湾との関係を維持する声明を出し、「我々は中国による領有権拡大の試みを目にしてきた」と強調した。
ミクロネシアのパニュエロ氏は11月14日、日本を訪問し、首相官邸で安倍晋三首相と会談した。2年後に日本で開く「太平洋・島サミット」の成功に向けて協力する考えで一致した。米中両にらみで自国に有利な条件を引き出す外交戦術に徹している可能性がある。