香港で反中デモ激化、建国70年控え緊迫 台湾でも集会
【香港=木原雄士、台北=伊原健作】「逃亡犯条例」改正案への反対をきっかけとする抗議活動が続く香港で29日、大規模なデモがあった。10月1日の中国建国70周年を祝う看板に火を付けるなど事実上の反中デモで、警察は催涙弾や放水砲を使ってデモ参加者を多数拘束した。台湾でも29日、香港支援のデモがあり、主催者発表で参加者は10万人規模にのぼった。
6月に始まった香港デモは17週目に入った。29日のデモは警察に事前申請しておらず、警察は出発地点の繁華街、銅鑼湾(コーズウェイベイ)で阻止しようとしたが、集まった人たちは行進を強行した。デモ参加者は警察の暴力行為を調べる独立委員会の設置や普通選挙の導入など「五大要求」を掲げた。
一部の若者は地下鉄駅のガラスを割ったり、中国の国旗や習近平(シー・ジンピン)国家主席の写真を踏みつけたりした。デモ隊は繁華街を移動しながら警察と激しく衝突し、香港島中心部は騒乱状態になった。香港メディアによると、警察は威嚇のため発砲し、緊張が高まった。
香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は26日に市民との対話集会を初めて開いたものの、条例撤回以外のデモ隊の要求には応じない姿勢を貫いている。行政長官選挙の民主化を求めた2014年の雨傘運動から5年となる28日にも数万人が集まった。民主派団体は10月1日にも大規模デモを計画しているが、警察は許可しない方針だ。
29日には台湾・台北でも香港との連帯を示すデモ行進が行われた。香港と台湾の民主派団体が呼びかけ、台湾独立志向を持つ与党・民主進歩党(民進党)の幹部らも参加した。雨が降りしきるなか香港民主派と同じ黒い服を着た若者らが路上を埋め「台湾は香港とともにある」と声を上げた。
デモに参加した台北市内の大学生、謝さん(21)は香港の混乱を報道などで目にして「中国に統一されたら大変なことになるという実感が初めてわいた」という。デモを通じ「民主主義を守る意志を中国に訴えたい」と話した。
中国の統治が及んでいない台湾では、香港は自分たちとは別と考える人が多かった。ただ統一を目指す中国の圧力が強まるなか、デモ隊と香港当局による混乱が拡大したことで中国への警戒感が高まった。20年1月の台湾の次期総統選に向けては対中強硬姿勢の民進党から出馬する蔡英文(ツァイ・インウェン)総統への追い風となり、対中融和路線の最大野党・国民党の候補、韓国瑜(ハン・グオユー)高雄市長に対し優位に立っている。
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