香港の混迷深まる 中国政府、学生ストにけん制強める

【香港=木原雄士、広州=比奈田悠佑】「逃亡犯条例」改正案をきっかけとする抗議活動が続く香港の混迷が深まっている。若者らが地下鉄駅の施設を破壊するなど暴力行為が止まらず、一部の中高・大学生は2日から授業のボイコットを始めた。中国本土側は10月1日の建国70周年という重要な節目を控え、けん制の度合いを強めている。
「勉強よりも自由が大事だと思ってここに来た。警察や政府がやっていることはおかしい」。2日午後、香港島・中環(セントラル)の集会に参加した女子生徒(17)はこう話した。香港大学など主要大学のほか100を超える中学・高校でボイコットが呼びかけられ、学校前で手をつないで「人間の鎖」をつくったりビラを配ったりした。
香港政府ナンバー2の張建宗・政務官は2日の記者会見で「学校に社会問題を持ち込むべきではない」と述べ、こうした動きを批判した。
ここ数日、デモ隊と警察の攻防は激しさを増している。香港政府によると8月31日から9月1日にかけてデモ隊が投下した火炎瓶は100以上に上り、32の鉄道駅が破壊された。警察はこの週末で合計159人を逮捕した。
中国本土側は香港のデモを激しく非難している。中国外務省の耿爽副報道局長は2日の記者会見で「(現状は)デモや集会の自由の範囲を完全に超えている。法治と社会秩序に対する重大な挑戦だ」と述べた。
中国共産党系メディアの環球時報は2日、社説で「香港政府と警察は暴乱の抑止に向けた法的措置と手段をまだ残している」と指摘。集会や通信の制限などを立法会(議会)の同意なしに適用できる「緊急状況規則条例」の発動を念頭に置いており、より強硬な姿勢も必要との見方を示した。
授業ボイコットを呼びかけた大学の学生会は香港政府への要求の回答期限を13日に設定した。条例の完全撤回や暴力行為を調査する独立委員会の設置など「五大要求」を主張。要求が満たされない場合は抗議をエスカレートさせるという。対立が先鋭化して暴力の応酬が続く懸念が高まっている。