インドネシア東部で暴動、州議会庁舎に放火 民族問題再燃を懸念
【ジャカルタ=鈴木淳】インドネシア東部のニューギニア(パプア)島で19日、パプア人の学生らによる大規模な抗議デモがあり、一部で放火などの暴動に発展した。西パプア州では州議会庁舎が放火され、複数のけが人が出たもようだ。インドネシア政府は民族対立や独立運動の再燃を懸念している。
国家警察などによると、デモは19日朝、西パプア州の州都マノクワリなどで発生した。治安当局などがパプア人に対して侮蔑的な言葉を使ったなどとして、数千人規模の学生らが「人種差別に反対する」と抗議した。デモは正午ごろまでにほぼ終息した。
ニューギニア島の西半分はインドネシア領となっているが、1960年代から独立運動が盛んで、インドネシア国軍とパプア独立派との戦闘などでこれまでに多数の死傷者が出ている。独立運動は近年、落ち着きをみせているが、パプア人の間ではインドネシアで主流派のジャワ人などへの反感が根強い。
デモの端緒となったのは、16日にジャワ島東部のスラバヤで発生した治安当局によるパプア人学生の拘束だ。治安当局はパプア独立旗を所持していたなどの容疑でパプア人学生40人強を拘束したが、その際に治安当局の要員らが「犬、ブタ」などと侮蔑する言葉を発したとされる。こうした情報がネットで広まり、複数の場所でパプア人学生による抗議デモが発生した。
インドネシア政府は民族間の対立が表面化しないよう火消しに追われている。スラバヤがある東ジャワ州のコフィファ州知事(元社会相)は19日、東ジャワ州でこうした事態が発生したことに対して「パプアの人々に謝罪する」と表明した。
ネット上にはパプア人とジャワ人などの対立をあおるような真偽不明の情報も出回っている。発信者や意図は不明だが、ティト国家警察長官は19日、パプア人の学生に対し「(偽の情報に)つられてはいけない」と警告した。