カーニー氏、英中銀から国連へ 気候変動特使に
【ロンドン=篠崎健太】国連のグテレス事務総長は1日、英イングランド銀行(中央銀行)のカーニー総裁を気候変動問題担当の特使に任命すると発表した。カーニー氏は2020年1月末に総裁を退く予定で、その時点で国連に転じる。これまで中銀トップとして気候変動がもたらす金融リスクなどに積極的に発言しており、国連に舞台を移して地球温暖化対策を主導することになった。
グテレス氏は、スペインのマドリードで第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)が2日始まるのを前に現地で記者会見した。特使に選んだカーニー氏について「気候変動対応を金融業界で推進してきた素晴らしい先駆者だ」と語った。「我々はグローバルな気候変動危機に直面している」と強調し、手腕に期待を示した。
カーニー氏は、地球の気温上昇を産業革命前から2度未満に抑える「パリ協定」の目標達成に向けた温暖化対策を、金融面から後押しする役割を担う。企業の低炭素化につながる投融資や情報開示の仕組みづくりなどが課題で、20年11月に英北部グラスゴーで開催予定のCOP26に向けた準備を主導する見通しだ。
カーニー氏は世界の金融当局者でつくる金融安定理事会(FSB)の議長を18年まで務め、気候変動に関する分析・開示を企業に求める「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の設置などに力を注いできた。イングランド銀では気候変動に伴う金融リスクの分析に取り組んでおり、企業や市場に早期の対応を促している。
カナダ出身のカーニー氏は、カナダ銀行(中銀)総裁を経て13年に外国人として初めてイングランド銀総裁に就いた。もともと18年6月で退く予定だったが、英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる対応に万全を期すため、英政府の要請で2度退任を延期した。英国の総選挙実施などのため後任人事が遅れており、退任は20年1月末からややずれ込む可能性もある。
国連の気候変動担当特使はマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長が務めていたが、20年米大統領選の民主党候補への指名争い出馬を受け、11月に辞任していた。