日本にフィットネスを広めた男 原点は五輪の惨敗
アスリート事業家の冒険(5)
身長160センチにも満たない恩師は、入場料を払って東京・代々木体育館に通い、底に足がつくかつかないかという深さのプールにつかって、遊びに来ていた子供たちに水泳を教えていた。誰からも頼まれもしないのに。素性を知らせず、保護者たちには「誰だろう、あの水泳を教えてくれるおじさん」とささやかれていた。
「その姿を見て、(こういう指導を)自分がやらなきゃって思ったんです」。東証1部上場のセントラルスポーツ...
「現役終えたら、ただの人」。人生の半ばで選手生活を終えるアスリートたちは、そんなふうに揶揄(やゆ)されてきた。だが「セカンドキャリア」という言葉がスポーツ界にも定着した昨今、現役引退に前後して事業を興す者がめずらしくない。社会の貧困を解消するため起業する者、自らが半生をささげた競技の改革に乗り出す者……。活動のフィールドを変えながら戦い続ける彼らの挑戦を追う。