ファーウェイ半導体戦略、根底揺らぐ 英アーム取引停止
【広州=川上尚志、シリコンバレー=中西豊紀】中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の事業モデルが米国の制裁で揺らいでいる。22日には英半導体設計大手のアーム・ホールディングスがファーウェイとの取引停止を示唆した。ファーウェイはアームの特許を活用して半導体を設計している。アームとの取引が止まれば、ファーウェイが米国への対抗策として掲げる半導体の内製化が難しくなり、経営に深刻な打撃となる。
アームは2004年に半導体設計の米アルチザン・コンポーネンツを買収し、この際に得た知的財産が今のアームの半導体技術に使われている。米政府はファーウェイへの輸出を禁じる製品について「米国外でつくっても最終価値のうち米国由来のものが25%を超えると制裁対象」としており、ファーウェイとの取引を止める必要が出ているようだ。アームは22日「米政府の規制に従う」との声明を出した。
米政府による輸出規制の線引きが明確ではないなか、ファーウェイと取引のある多くの企業は自社取引が規制の対象となるか精査中だ(「ファーウェイ禁輸、広がる混乱 対象製品どう線引き」参照)。ファーウェイに対してはパナソニックも22日までに一部製品の取引を中止した。英企業のアームなどが取引停止に踏み切れば、他の外国企業に同調する動きが広がる可能性がある。
アームはスマートフォン(スマホ)向けプロセッサーの中核を担う「コア」の設計情報で世界シェアの大半を持つ。ファーウェイはスマホで使う中核半導体の「キリン」を内製化しているが、同半導体の基板技術はアームからライセンスとして買っている。契約内容にもよるが、アームとの取引が完全に切れるとファーウェイは中核半導体の内製ができなくなる。対米依存度を減らす切り札だったキリンがつくれなくなることは同社には致命的な痛手だ。
ファーウェイはアームとデータセンターなどに使う半導体も共同で開発している。ファーウェイはアームの特許に代わるノウハウを確保する必要があり、スマホなど幅広い製品の今後の開発に支障が出る可能性がある。
また、アームに頼らずに半導体をつくったとしても、米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」がスマホ上で動かない問題にも直面する。
グーグルによると、アンドロイドはアームと米インテルなどの「x86」と呼ばれる半導体がなければ作動しない。ファーウェイが開発を進めるとされる自前のOSはアンドロイドを土台にしているため、アームに頼らない半導体をつくれたとしてもOSが動かせないリスクがある。
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