FRBが0.25%追加利下げ 緩和継続は判断割れる
【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.25%引き下げ、7月に続く利下げに踏み切った。貿易戦争のリスクを警戒し、政策金利を1%台に下げて景気悪化を防ぐ。パウエル議長は「景気が減速すれば追加利下げが適切だ」と主張したが、年末までに追加緩和を見込む会合参加者は現時点で過半数に達していない。
18日の会合では、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を、年2.00~2.25%から1.75~2.00%に引き下げた。政策金利が1%台に下がるのは1年ぶり。ただ、投票メンバー10人のうち、7月の会合に続いて2人の地区連銀総裁が利下げに反対票を投じ、政策判断は割れたままだ。
米経済は拡大局面が11年目に突入し、記録が残る1850年代以降で過去最長を更新した。失業率も3%台後半と一時は半世紀ぶりの水準まで下がり、景気の基調は底堅い。ただ、中国などとの貿易戦争で企業心理が大きく悪化。パウエル議長は18日の記者会見で「現在進行形のリスクに保険をかける」と述べ、景気減速を未然に防ぐ異例の「予防的利下げ」を再び決断した。
FOMCは会合後に公表した声明文で「経済の拡大が続くとみているが、この見通しには不確実性が残る」と指摘した。さらに「成長持続へ適切な行動をとるだろう」とも強調し、パウエル議長も「景気がさらに弱まれば、より積極的に動く準備がある」と述べ、さらに追加利下げに踏み切る可能性を示唆した。
ただ、同時に公表した金融政策予測では、FOMCメンバーの意見が大きく割れた。正副議長、理事、地区連銀総裁による会合参加者17人のうち、19年末までにさらに1回の追加利下げを見込むメンバーは7人にとどまった。5人は金利据え置きを予測し、ほかの5人は適切な政策金利を2.00~2.25%と主張。参加メンバー17人の中央値でみると「19年末までの追加利下げはゼロ回」となった。景気の下振れが早期に回避できれば、利下げ局面は極めて短期に終わる可能性がある。
もっとも、トランプ米大統領はFRBに対して「政策金利をゼロかそれ以下に下げるべきだ」とマイナス金利にまで言及して金融緩和を求めている。20年の大統領選を前に景気不安を完全に払拭したいためだが、景気拡大期の利下げは異例で、FRBは緩和局面を小幅にとどめたい考えだ。先行きの金融政策を巡り、ホワイトハウスとFRBの摩擦が一段と強まる可能性もある。
基軸通貨ドルを抱えるFRBが連続利下げに踏み切ったことで、各国・地域の中央銀行も通貨高を警戒して金融緩和に傾きそうだ。欧州中央銀行(ECB)は12日、マイナス金利を深掘りして資産買い入れも再開する金融緩和を決断。世界的な「同時金融緩和」は景気の下支えとなる一方、過大債務などのリスクを強める可能性もある。