東南アの親中国家、ようやく新型コロナ対策
中国「正常化」で転換
【ハノイ=大西智也】新型コロナウイルスの感染者が発生源の中国で減少する一方、同国と関係の深い東南アジアの低所得国が感染抑制策を強化し始めた。カンボジアなどは当初、新型コロナ対策に消極的だったが、中国が国内の正常化を模索し始め、遠慮する必要がなくなったようだ。外国人の入国制限や国内の外出規制に踏み切った。各国経済には打撃を与えるが、中国の経済支援で埋める思惑もありそうだ。
姿勢を鮮やかに転換したのが親中国の筆頭であるカンボジアだ。3月末に感染者が累計100人に達すると観光ビザ(査証)の発給を停止した。
国内移動の制限にも着手し、16日まで州をまたぐ移動を禁止した。「相当に厳しくやっている」(地元住民)という。
フン・セン首相は2月、新型コロナ感染が急拡大する中国をあえて訪問し、「安全性」を強調するパフォーマンスをみせた。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は満面の笑みで出迎えた。
このころのフン・セン氏は「病気を恐れる必要はない。特別な往来制限はしない」と繰り返していた。だが、カンボジアでも3月中旬には感染者が目立ち始め、次第に入国制限を強化していた。
カンボジアと並ぶ親中国のラオスでは3月24日に初めての感染者が確認された。ラオスはその前の3月18日に観光ビザの発給を全面停止した。その後、国民に対し通院や生活必需品の買い物などを除く外出を禁じた。
ラオスの観光ビザの発給停止は、新型コロナが発生した中国の湖北省武漢市で感染者確認がゼロになった日に重なる。湖北省政府は3月24日、新型コロナの感染抑制を狙った武漢市の事実上の封鎖を4月8日に解除すると発表した。同日には予定通り実施した。習指導部は「コロナ後」に向け、明確にかじを切った。
これが東南アジアの親中国にとって、新型コロナを抑える強制措置の「ゴーサイン」になった。
少数民族ロヒンギャを迫害して米欧の非難を受け、中国との関係を荒立てたくないミャンマーは3月13日、大統領名で集会の自粛を求め、公務員の在宅勤務を始めた。世界保健機関(WHO)によるパンデミック(世界的な大流行)宣言発令の2日後だった。外国人の入国を制限し、3月30日には空路を封鎖した。
一方、中国と南シナ海の領有権を争うベトナムは遠慮しない。1月下旬、国内で中国人の旅行者の感染が判明すると、国境を一時的に閉鎖し、中国本土との航空便の往来を禁止した。韓国や欧州諸国からの入国も事実上止め、3月18日にはビザ発給を全面停止した。全土で1日から15日間、外出を原則禁止している。
新型コロナのまん延は、各国の中国との「距離」を浮き彫りにした。