対北朝鮮「最大限の圧力」文言削除 拉致にらみ軟化か 19年版外交青書 日朝対話にらむ
河野太郎外相は23日の閣議で、2019年版の外交青書を報告した。北朝鮮に関する記述では、18年版にあった「あらゆる手段を通じて圧力を最大限まで高めていく」との文言を削除した。安倍政権が最重要課題と位置づける日本人拉致問題の解決に向け、一定程度の軟化姿勢を示して歩み寄りを引き出す狙いがあるとみられる。
政府は北朝鮮が完全な非核化を実現するまで国連安全保障理事会の制裁を維持する方針だ。一方で3月に国連人権理事会に11年続けて提出した北朝鮮の人権侵害を非難する決議案の提出を見送るなど、北朝鮮との対話の糸口も模索している。菅義偉官房長官は23日の閣議後の記者会見で、外交青書での北朝鮮に関する記述に関し「最近の情勢を総合的に勘案して決定している」と述べた。
19年版の外交青書では、18年6月と今年2月の米朝首脳会談を踏まえ「国際社会が一体となって米朝プロセスを後押しすることが重要だ」と明記した。北朝鮮が核実験やミサイル発射を自制しており、核・ミサイル開発に関し「重大かつ差し迫った脅威」とした表現も落とした。
北方領土に関しては、18年版にあった「北方四島は日本に帰属する」との表現がなくなった。日本の法的立場について具体的な説明もなく「問題を解決して平和条約を締結する」とだけ明記した。「未来志向の発想により、平和条約の締結を実現する」との文言も入れなかった。
日韓関係は「韓国側による否定的な動きが相次ぎ、非常に厳しい状況に直面した」と強調した。韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた元徴用工訴訟や韓国軍艦の海上自衛隊機へのレーダー照射事件などが念頭にある。16、17年版にあった「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」との文言は18年版と同様、明記しなかった。
改善傾向にある日中関係については「最も重要な2国間関係の1つ」とした。東シナ海での中国の一方的な開発などを例示し「東シナ海の安定なくして日中関係の真の改善はない」とも訴えた。