経団連、電源の火力依存に危機感 エネルギー改革案
経団連は8日、電力システムの再構築に向けた提言を正式に発表した。日本は電源の8割を二酸化炭素(CO2)を排出する火力発電に頼り、国際的に見ると電気料金も高い。温暖化ガスを削減する政府目標の達成に向け、再生可能エネルギーを伸ばすための送電網の整備や、原子力発電所の再稼働を提言の柱に据えた。
中西宏明会長は同日記者会見し「日本は資源を持たない。このままでは電力の安定供給を保障できなくなる」と述べた。エネルギー政策の先行きが読みにくい現状を改め、「電力事業に投資できる環境をつくるべきだ」とも訴えた。
日本は東日本大震災後に原子力発電所が相次ぎ停止し、足りない電力を石炭火力発電などで賄っている。ただ、石炭火力はCO2の排出量が多い。温暖化対策の観点で、石炭火力は投資家も敬遠する傾向にある。
経団連の提言はこうした現状を踏まえ、再生エネや原子力を普及していくべきだとした。
再生エネは北海道や九州などの発電に適した場所から消費地への送電網の整備などが課題だ。大手電力による電力が優先されるような送電の仕組みも見直す必要がある。
スマートグリッド(次世代送電網)の導入や資金の調達については、国が国債を発行した資金を元手に独立行政法人などを通じて事業者に資金を貸し出す財政投融資の活用を提案した。
6月に大阪市で開く20カ国・地域(G20)首脳会議を控え、政府は2日、日本が排出するCO2を70年ごろまでに実質ゼロとする新たな目標をまとめた。実際は電源構成の8割を火力発電に依存し、依存度は震災前から3割上がっている。
温暖化ガスの削減には原発の再稼働が必要との指摘は多い。中西氏も会見で「本当に社会が受け入れるなら、原発の比率を高めるのが一番現実的だ」と語った。安全性が確認できた原発の再稼働を進め、小型の原子炉などの技術開発を進めるよう求めた。
小型原子炉は日立製作所がゼネラル・エレクトリック(GE)と連携するなど日本でも開発に取り組んできた。だが、福島第1原発の事故を受けて、新増設の議論は進んでいない。電力会社も「将来の原子炉はより安全性・経済性に優れた新型原子炉の検討が必要」(関西電力)とするが、具体的な見通しは立っていない。