アップル、クアルコムと知財で和解 5Gスマホに道
【シリコンバレー=白石武志】スマートフォン(スマホ)向け通信半導体の知的財産をめぐり米国内外で訴訟合戦を繰り広げていた米アップルと米半導体大手クアルコムは16日、全ての訴訟を取り下げることで和解したと発表した。次世代通信規格「5G」の開発を主導してきたクアルコムとの関係修復によって、ライバルに出遅れていた「iPhone」の5G対応が前進することになる。
両社は16日に出した共同声明で、世界中で提起された両社間の全ての訴訟を取り下げると述べた。アップルは2018年9月に発表したiPhoneの最新機種で停止していたクアルコムからの通信半導体の調達を再開することでも合意。クアルコムが持つスマホ関連特許について使用料などの条件を定めた6年間のライセンス契約を新たに結ぶことも明らかにした。
両社の知財紛争は約2年前に始まった。アップルは特許使用料を過大に請求しているとして、17年1月にクアルコムに対する訴訟を提起し、自社のサプライヤーにもクアルコムに特許使用料を払わないよう指示してきた。クアルコムはアップルに対抗して米国内外で知的財産侵害の訴えを起こすなど、大規模な知財紛争に発展した。
クアルコムは1980年代から携帯電話向け半導体の開発を主導しており、電池を長持ちさせる省電力技術などを含めて同社の知財を抜きにはスマホはつくれないとされる。19年に普及が始まった5Gの規格策定でも中心的な役割を果たしており、同社の技術支援を受ける中韓のスマホメーカーが19年に入って5G対応スマホを相次ぎ発表するなか、アップルはiPhoneの5G対応時期を示せていなかった。
和解の詳細な条件は明らかになっていないが、iPhoneの5G対応を急ぐアップルがクアルコムから通信半導体の調達を再開するために、特許使用料の支払い条件をめぐって歩みよった可能性がある。16日の米国市場では和解を受けて業績予想を上方修正したクアルコム株が前日比23%高となる一方、アップル株はほぼ横ばいで取引を終えた。