日本製鉄など鉄鋼各社 65歳定年延長を導入
21年から適用 約20万人対象に
日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所など鉄鋼4社は4日、定年を60歳から65歳に引き上げると発表した。約5万人が対象となり、2021年度から適用する。シニアには若手に技能を伝える役割を期待しているという。造船業など他業種に比べて遅れていた定年延長に向けてようやく重い腰を上げた格好だ。
既に重工や造船業界は先行して65歳への定年延長を導入している。川崎重工業は4月から、定年延長の運用を始めた。
鉄鋼4社の労使は17年から65歳まで見据えた制度設計について協議を進めてきた。このほど制度の考え方をまとめ、定年延長の導入を決めた。現在は60歳定年を迎えた社員を再雇用している。定年延長に伴う現役世代の原資を減らさないため、入社時から65歳までを対象にした新たな雇用体系を導入する。各社の制度設計はこれから。
鉄鋼業の組合員は日本製鉄など高炉メーカーだけでも約5万人と多い。重工などが加盟する基幹労連の組合員の半数を占める。非組合員も含めた、鉄鋼関連産業に関わる従業員は国内で約20万人。一方、世代交代が急速に進んだ結果、トラブルなどが増加し、技術承継や人材育成が喫緊の課題となっていた。
基幹労連の神田健一委員長は4日、「少子高齢化が進む中で技術や技能伝承は課題。定年引き上げ対象者だけでなく、全ての年代の将来不安を解消する」と話した。
鉄鋼業は1985年に日本が円高進行を容認したプラザ合意後の鉄鋼不況など、度重なる「鉄冷え」のたびに合理化を繰り返してきた。日本製鉄の場合、70年代に8万人いた従業員は40年間で4分の1に減少した。
ただ、リストラをせずに、関連会社など鉄以外の事業に出向させる仕組みで雇用を維持してきた。ただ、出向比率の高さや業界再編が続いたことで、新たな制度を導入するための合意形成に時間を要した面があった。