上場33社が早期・希望退職 1~5月、19年の通年に迫る
商工リサーチまとめ
東京商工リサーチは2日、2020年1~5月に上場企業33社が早期・希望退職を募集したと発表した。前年同期の2倍で、19年の年間(35社)に迫る。20年は新型コロナウイルスの影響で企業の業績悪化が目立つ。19年に多かった「黒字リストラ」から一転して旧来型の赤字リストラが増加しそうだ。
早期・希望退職は企業が退職金の割り増しなどの優遇措置をとり、定年前に退職する社員を募る。20年1~5月は33社(5417人)で、前年同期は17社(7011人)だった。小規模で実施する企業が多く、人数は23%減ったが、1~5月に30社を超えたのは7年ぶりだ。
特に最終損益が赤字に陥った状況での実施が増えている。前年同期の17社は赤字企業の比率が約3割にとどまっていたが、20年は約5割に増加。「今後も赤字や減収減益を理由にした早期・希望退職が増える。年間では少なくとも1万人になりそうだ」(同リサーチの二木章吉氏)
新型コロナの影響を理由に挙げたのは計5社だった。1~3月は訪日外国人の需要が急減したラオックスとHANATOUR JAPAN(ハナツアージャパン)の2社。4~5月は無料情報誌のぱどなど3社だった。「新型コロナで生活様式が大きく変わり、人員配置を根底から変えなければ生き残りは困難だと判断した」(ぱど)
この5社以外にも、間接的に新型コロナが影響している例はある。
レナウンは長らく経営不振が続いていたところに、新型コロナによる売り上げ急減で資金繰りが行き詰まり、民事再生手続きに入った。6月に300人規模の希望退職を実施する。グループ全体の3分の1に相当し、経費削減を進めて事業継続を目指す。
同リサーチの二木氏は「今年後半以降、繊維や小売りなどの業界で新型コロナによる希望退職が増えそうだ」とみる。市場環境が急変した場合、大手企業ほど人員削減以外の構造改革を手掛け、早期・希望退職は後回しにしがちだ。08年9月のリーマン・ショック後も、希望退職が大きく増えたのは4カ月後からだった。
00年以降で早期・希望退職の人数が最も多かったのはITバブル崩壊が影響した02年(約4万人)で、リーマン後の09年は2万人超だった。19年は6年ぶりに1万人を超えたが、業績が堅調なうちに人員構成を見直す「先行型」が中心だった。19年の35社のうち、約6割は最終損益が黒字の「黒字リストラ」だ。
20年は新型コロナで経営不振による希望退職が増えそうだが、一方で「需要が戻ったらまた人手不足になるかもしれない」(大手外食チェーン)と悩ましい声もある。
上場企業以外でも雇用への影響は深刻だ。同リサーチによると新型コロナによる倒産は、1日までに約200社に達した。20年に1万社が倒産、5万社が休廃業や解散すると見込んでいる。
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