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着々と進む「アマゾン銀行」誕生への布石

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CBINSIGHTS
ネット通販の王者、米アマゾン・ドット・コムが放つ「アマゾン・エフェクト(効果)」は今やインターネットの中だけにとどまらない。米高級スーパーのホールフーズを買収し、無人コンビニの「アマゾン・ゴー」も話題を呼んだ。アマゾンがさらなる「経済圏」の拡大に向けて着々と強化を進めているのが金融分野だ。やや地味な取り組みの積み重ねだがその全貌を分析すれば、近い将来に「アマゾン銀行」が金融業界を揺るがす可能性は否定できない。

米ベンチャーキャピタル(VC)大手Andreesen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のゼネラルパートナー、アレックス・ランペル氏は2月、金融サービスに本格参入する可能性があるIT(情報技術)大手を列挙した。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

「最も手ごわいのはアマゾンだ。同社が低金利ローンや銀行口座の開設などに乗り出せば、サイトの売り上げはさらに増えるだろう」

ランペル氏はこう分析する。実際、アマゾンの銀行業参入の観測は年々強まっている。

CBインサイツが調べた範囲では、アマゾンが次世代の銀行を築きつつあると断言するのは難しい。だが、アマゾンが「自らのエコシステム(生態系)への参加者を増やす」という戦略の柱となる金融商品の開発に力を注いでいるのは明らかだろう。

アマゾンは次の点を目標に掲げ、その達成に向けた手段を構築している。

1、アマゾンのサイトの出店業者と、各業者の売り上げを増やす

2、アマゾンのサイトの顧客と購入額を増やす

3、売買をさらに円滑にする

アマゾンは同時に、金融とITを融合させた「フィンテック」関連の企業にも投資している。投資先の大半はインドやメキシコなどの海外市場だ。

こうした商品開発や投資判断は、アマゾンには万人を対象にした従来型の銀行をつくる意思がないことを示している。むしろ、銀行のエッセンスを採り入れた上で、これをアマゾンの顧客(出店業者と消費者)向けにアレンジしているのだ。

アマゾンは自社のための銀行を築きつつあるといえるだろう。預金を保有する銀行に参入するよりも説得力がある。

アマゾンは新商品を導入するまでに入念に予防線を張ることで有名だ。金融サービスも例外ではない。同社は試行錯誤を経て、決済や現金チャージ、融資という金融サービスを築いてきた。

ここ数年は特に「決済」に積極投資している。決済システムの使い勝手が中核事業のネット通販と密接に関連していることを考えれば、当然だろう。

アマゾンの最新の決済サービス「Amazon Pay(アマゾンペイ)」は、顧客向けのデジタルウォレットと、オンラインとオフラインの小売業者向けの決済網の双方を備えている。もっとも、同社は決済システムについて10年以上にわたり試行錯誤を繰り返してきた。下の年表はアマゾンペイの進化の軌跡だ。

アマゾン初の決済サービスとされる「Pay with Amazon(ペイ・ウィズ・アマゾン)」は2007年に導入された。同年にはモバイルでの個人間決済サービスを提供する米TextPayMe(テキストペイミー)を買収し、11年にこれを「Amazon Webpay(アマゾン・ウェブペイ)」としてリニューアルした。

ただ、ウェブペイは定着せず14年に打ち切られた。アマゾンで個人間決済を始めるのは時期尚早だったようだ。

アマゾンは07年、米Bill Me Later(ビル・ミー・レーター、正式名称は14 Commerce)にも出資した。ビル・ミー・レーターはフィンテックの決済プラットフォームの草分けで、小売り大手は同社のシステムのおかげで柔軟な融資サービスを提供できた。ビル・ミー・レーターは08年にペイパルに買収されたが、アマゾンはその後も顧客の決済をスムーズにすることに力を注いできた。

ここ数年は、アマゾンペイを通じたデジタルウォレットの導入、経営破綻した米モバイル決済スタートアップGoPago(ゴーパゴ)からの人材獲得、社内での開発など様々な技術を駆使し、決済サービスの向上に取り組んでいる。

現在のアマゾンの決済サービスは、顧客向けのデジタルウォレットと、オンラインとオフラインの小売りや買い物客向けの決済網を兼ね備えたアマゾンペイだ。

これは魅力的な収益を得られる分野だ。加盟店が支払う手数料だけでも銀行やカード会社、決済処理会社が得る収益は年間900億ドルに上る。

アマゾンは加盟手数料の軽減に取り組むだけでなく、アマゾンペイの決済網に小売り各社を取り込む策も模索。大口顧客のアマゾンがカード会社から得た手数料の特別割引を、アマゾンペイを採用した小売りに振り向ける方針を明らかにした。スケールメリットと低料金はアマゾンの顧客獲得戦略の常とう手段だ。

アマゾンは顧客の伸びや経営指標を公表しないことで知られるが、16年のアマゾンペイの利用者は170カ国・地域の3300万人に上ったことを明らかにした。サービスをフランス、イタリア、スペインにも広げ、政府の支払いや旅行、保険、娯楽、慈善寄付などの分野でも使えるようにしたことで、アマゾンペイを使った決済は急増した。

もっとも、アマゾンペイでは失敗も犯している。最も有名なのは、中小企業向けの決済サービス「Amazon Local Register(アマゾン・ローカル・レジスター)」だ。このサービスはゴーパゴから獲得した人材を起用して14年8月にスタートした。当時は競争力のある手数料を課し(スクエアよりも丸々1%安かった)、カードリーダーの価格も1台10ドルだったため、ペイパルやスクエアの強力なライバルになるかと思われた。

ところが、アマゾンは15年10月、このサービスを打ち切ると表明した。手数料は割安でも、小売り各社がアマゾンに事業全体の詳細なデータを渡すことを不安視したため、利用は伸びなかった。

アマゾンは結局、モバイル向けに「アマゾンで支払う」というボタンを設け、ウェブやアプリでの決済サービス拡大をめざしてチームを新設した。

このチームのリーダーには、ペイパルの社員だったパトリック・ゴーチエ氏を充てた。ゴーチエ氏は失敗に終わった決済サービスについて「成功の秘訣は、どう転ぶか分からなくてもやってみることだ。成功する方法が分かったら、再挑戦すればいい」と語った。

アマゾン・ゴーは決済サービスの秘密兵器か

商品開発はアマゾンの得意分野だ。特に無人コンビニエンスストア「アマゾン・ゴー」では、社員を対象に生体認証を使った決済技術を繰り返し試している。

「Just Walk Out(歩き去るだけ)」と名付けられたこの技術は、コンピュータービジョン、センサーフュージョン、最先端の機械学習を駆使することで、スムーズな決済を実現。アマゾンが特許を持つ技術が活用されている。

「Just Walk Out」はアマゾンアプリで利用できる。これを使って入店し、店内で商品の会計を済ませることなく店から出ることができる。

この技術はまだ試験段階だが、アマゾンは年内にさらに6店舗をオープンする計画だ。同社は通常、特許を取得した技術を営利目的には使わないが、これを傘下の米食品スーパー、ホールフーズ・マーケットに適用しようとしても驚きではないだろう。

アマゾンのサービス「アマゾン・キャッシュ」は、クレジットカードやデビットカードで決済するネット通販と、現金や金券などの「代金引換」が主流の実店舗との隔たりを埋めるサービスだ。

このサービスは17年4月にスタートした。紙に印刷するかオンライン画面でバーコードを示すことで、米ドラッグストア大手CVSやセブンイレブンなどの提携店舗で現金をチャージできる。手数料はかからない。

アマゾン・キャッシュは銀行口座を持たない層を取り込もうとするアマゾンの戦略にぴったり合う。銀行口座や電話番号がなくても、ネットとプリンターが使えればアカウントを開設できる。

米連邦預金保険公社(FDIC)の最新の調査によると、米国で銀行口座を持たない層は3350万世帯に上ると推定される。アマゾン・キャッシュが導入されるまで、こうした層はアマゾンのネット通販を利用できなかった。

アマゾンはこのサービスの導入後、次の年表で示したような中核商品を展開している。

アマゾン・キャッシュは18年5月、小銭両替機を展開する米Coinstar(コインスター)との提携を拡大。余った小銭をコインスターの両替機に入れると、紙幣や金券と交換するのではなくアマゾン・キャッシュのアプリにチャージできるようになった。

両替機の主な設置場所である食品スーパーは、ホールフーズの買収に伴いアマゾンの新たな事業基盤になっている場所だ。両替機は米ウォルマートなどライバルの店舗がある人通りの多い場所にも置かれている。この提携は顧客にアマゾンのサイト利用を促せる上に、同社のエコシステムを強化し、参加者を増やすという戦略の柱にも合致する。

コインスターが大型店や金融機関などに設置している両替機は2万台近くに上る。年内に5000台でアマゾンの新サービスを導入し、利用が順調なら対応台数を増やす可能性がある。

アマゾンはアマゾン・キャッシュの機能を活用し、銀行口座を持たない層に加えて次世代の消費者も取り込もうとしている。

同社は15年半ば、子ども向け決済サービス「アマゾン・アローワンス」を投入した。これは現在、アマゾン・キャッシュの付帯サービスとなっている。親の同意があれば、子どもはアマゾンで自分のアカウントを作成し、アマゾン・アローワンスを使って買い物ができる。親は子どものアカウントに定期的に資金を振り分け、子供の買い物に目を光らせるコントロール機能を追加できる。

アマゾンはさらに、子どもが同社のサイトにアクセスしやすくすることにも資金を投じている。

例えば、アマゾンのVC、Alexa Fund(アレクサファンド)は17年12月、若者向けに代替デビットカードを発行する米Greenlight Financial Technology(グリーンライト・ファイナンシャル・テクノロジー)の資金調達(調達額1600万ドル)に参加した。グリーンライトのカードでは、親が利用限度額を管理し、モバイルアプリを通じて子どもにお小遣いを渡すことができる。グリーンライトは18年3月、利用者が10万人を突破したことを明らかにした。

まだ何の計画も発表されていないが、アマゾン・キャッシュはグリーンライトのカードをアマゾン・アローワンスに連携し、アローワンスが使える場所を拡大したいと考えている。

銀行口座を持たない人をターゲットにしたアマゾン・キャッシュは、海外での商機も大きい。例えば、インドでは銀行口座を持たない人は1億9000万人に達し、メキシコでは口座を持つ成人は全体の37%にとどまる。アマゾン・キャッシュはこういった市場での顧客獲得の切り札になる。

今後はどんな手を打ってくるだろうか。例えば、ショッピングモールや大学、食料雑貨品店といった人の出入りが多い場所や、銀行口座の保有率が低い地域にアマゾン・キャッシュを拡大するかもしれない。ホールフーズに設置するコインスターの両替機を増やすかもしれない。

アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は、金融サービスの中でも特に融資事業の開拓に積極的だ。

ベゾス氏は16年の株主への手紙で、中小事業者向けローン「アマゾン・レンディング」を拡大する構想について説明した。提携銀行と共に融資の大半を管理することで信用リスクを下げ、投資家の不安も和らげることができる。

アマゾンは現在、米国、英国、日本、インドに加え、提携カードの形態で米消費者にも融資サービスを提供している。

アマゾンがプライムカードを提供するのは、プライム会員を増やし、ネット通販の売り上げを伸ばすという2つの企業目標を達成したいからだ。クレジットカード保有者にプライム加入を促すために、プライム会員限定の特典も設けている。クレジットカード保有者は非保有者よりもサイトでの利用額が多い傾向があるため、カードを提供すればネット通販にも恩恵が及ぶ。

アマゾンは5月、プライムリワーズ・ビザカードでの5%キャッシュバックの対象店舗をホールフーズにも拡大した。これはプライム会員向けの特典や専用メリットを拡充してカードの競争力を高め、アマゾンのサイト利用者を取り込む策の一例だ。

さらに、アマゾンのビザ提携カードには、用途が限定される流通系カードではなく、日常的に使われるカードにしたいとの狙いが透けて見える。

金融の次の柱は?

アマゾンは決済、キャッシュ、融資などに進出する一方、金融サービスのエコシステムをさらに拡大しようとしている。第1が「決済専用口座」だ。

3月には、アマゾンがJPモルガンやキャピタル・ワン・ファイナンシャルなどの銀行と当座預金口座に似たサービスについて協議していることが報じられた。

アマゾンが主にアマゾン・キャッシュを通じてこのサービスを進めようとしていることがうかがえる。04年にはアマゾンのアカウントを銀行の口座情報やプリペイドカードと連携させる手段で特許も取得している。

さらなる展開は明らかにされていないが、このニュースをきっかけにアマゾンがついに銀行業に参入するのかを巡って議論が巻き起こっている。

第2が「保険」だ。アマゾンは正式には保険事業に参入していないが、保険市場や商品に関心を示し始めている。

16年4月には英国で他社リソースを活用した初の保険「アマゾン・プロテクト」に乗り出した。ヘッドホンからキッチン家電に至る消費者向け製品が事故や盗難にあった際の被害を補償する。保険金の請求は、延長保証サービスを手がける米The Warranty Group(TWGワランティサービス)のLondon General Insurance Company(ロンドン・ゼネラル・インシュランス・カンパニー)が引き受ける。このサービスはスペイン、イタリア、ドイツ、フランスなど他の欧州諸国にも拡大されている。

TWGは18年6月、米保険会社Assurant(アシュラント)に推定25億ドルで買収された。これにより、アシュラントが展開する新たな市場にアマゾンのサービスを拡大しやすくなった。

一方、アマゾンは18年5月、インドの保険フィンテックAcko(アッコ)の1200万ドルの資金調達を主導し、同国の保険市場にいち早く参入した。アッコは自動車や二輪車を対象にした従来型の保険を提供する一方、ネット通販、旅行、配車アプリ専用の商品など「インターネット経済」を対象にした保険にも力を入れている。

アッコのヴァルン・ドゥアCEOはアマゾンからの出資について「将来の連携手段を見いだすのが出資の狙いだ」と話す。

アマゾンの金融戦略は、同社のサイトの参加者を増やすという戦略の実現に重きを置いている。

実際、アマゾンは金融サービスを拡充するために、提携やM&A(合併・買収)、投資よりも社内での商品開発に力を入れている。フェイスブックやマイクロソフト、グーグルといったライバルがM&Aや投資に積極的に励んでいるのに比べると、驚くべき戦略といえるだろう。

少し引いた視点で捉えると「アマゾン銀行」の初期の形態が見えてくる。アマゾンのサイト参加者を支え、どのプラットフォームよりも簡単に売買や取引ができる金融商品がそろっている。

従来の銀行が懸念すべきは、このアマゾン銀行の潜在力だ。過去の例に従えば、アマゾンはまず唯一かつ最も重要な顧客である社内向けに中核商品を開発する。クラウドサービスの可能性について社内で徹底検証した後に、これを社外の顧客や第三者向けに転用したAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)がまさにそうだ。何年もかけて商品を開発し、その機能を社内で繰り返し試してから、アマゾンはようやく他の顧客に中核商品の提供を開始し、詳細を明らかにするのだ。

その頃には、何の手も打って来なかった既存各社はもはや追い付けないだろう。

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