中国発 原油暴落ドミノ(大機小機)
原油価格を予想する場合、一般的に中東情勢や石油輸出国機構(OPEC)の動き、最近ではシェールオイルなどの動向が語られやすい。こうした供給側の要因が注目されるのは、アナリストが具体的に語りやすいからである。
一方、筆者が長年、市場で実感として感じてきたのは、原油価格の大きなトレンドは結局、需要側の事情で決まってきた点にある。需要とは世界経済動向のことであり、今日では原油を最も消費する中国の影響が大きい。
世界経済の今年の最大の不安は、中国経済を起点とする減速ドミノが世界中に及ぶことではないか。中国経済の減速は原油価格だけでなく資源価格全般に及ぶ。それは産油国・資源国を中心とした新興国経済に波及し、さらに先進国にも影響が及ぶ。2016年には、「ネガティブ・フィードバック」と称するこうした連鎖が顕現化した。今年はその再来が不安視される。
14年に1バレル100ドル台をつけた原油価格は、15~16年にかけ30ドル割れし、3分の1以下に暴落した。昨年秋から今年初めにかけては、80ドル近くから40ドル台前半まで低下した。現在は50ドル台で小康状態が続くが、中国経済の減速が続くうちはもう一段の下落リスクがあろう。米国がシェールオイルで産油国に転じたことで、従来に比べて価格下落リスクも増している。
昨年も新興国問題が注目されたが、米国の利上げに伴う通貨安という、あくまでも特定の国に限定された「点」の世界だった。しかし、原油安・資源安が広がれば、産油国・資源国に幅広く「面」となって波及しやすい。
16年の原油価格底入れは、トランプ米大統領就任に伴う大減税中心のトランプラリーと中国経済の回復が背景だった。半面、今日は米中が通商戦争ともいえる状況にあり、両国主導の前向きな回復シナリオは描きにくい。「風が吹けばおけ屋がもうかる」とされるドミノ連鎖は今や「中国がせきをすれば世界中が風邪をひく」状況だ。
今年は世界中が中国発のドミノにおびえる年だ。世界経済を人質にとった中国と米国のチキンレースは、両国の覇権争いのなか、簡単には収拾しない。原油価格が回復した16年と今日の最大の違いもそこにある。そのドミノの怖さを、両国のリーダーは認識しているだろうか。
(玄波)
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