スペイン、所得保障導入 85万世帯に最大月12万円
【パリ=白石透冴】スペインの中道左派サンチェス政権は低所得の約85万世帯、230万人を対象に世帯あたり最大月1015ユーロ(約12万円)の所得保障を導入した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う失業などで困窮する人が増えているためだ。約30億ユーロの歳出増となる見通しで、貧困対策と財政規律の両立が課題になる。
サンチェス首相が5月29日、閣議で導入を決めた。単身世帯は月462ユーロを受け取り、家族の人数に応じて支給額が変わる。他の公的支援も従来通り受け取れる。国民の約5%が対象となる。
サンチェス氏は5月23日の記者会見で「国民が食事に困っているときに、政府や社会が知らぬふりをすることはない」などと説明していた。連立を組む急進左派ポデモスも強く導入を主張したもようだ。コロナ禍後も、恒久的な制度として残すことを検討する。
スペインでは感染が爆発的に拡大し、先進国でも厳しい部類に入る外出制限を3月から実施した。一時は建設業や製造業も活動を停止、多くの人が失業状態に陥った。
欧州メディアによると、首都マドリードでは生活に行き詰まり、支援団体から食料配給を受け取る人の列ができた。5月から外出制限を本格的に緩和しているが、失業率は3月の14.5%から12月までに約20%まで高まる恐れが指摘される。
歳出増分の30億ユーロはスペイン国内総生産(GDP)の約0.2%に当たる。失業者向け補償などでも歳出が膨らむ見通しで、財政悪化への懸念が募る。
欧州では低所得者層に条件を設けずに一定額を給付する所得保障制度の導入が、たびたび議論されている。英国のスコットランド行政府がコロナ禍を受けて導入の必要性を主張している。フィンランドは17年に試験的に導入し、失業率低下には効果がないと結論づけて、恒久化を見送った。フランスでは17年の大統領選で社会党候補が制度導入を主張した。
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2023年5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行しました。関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。
-
【よく読まれている記事】
- 新型コロナウイルスは体内にいつまで残るのか
- 「コロナに決してかからない人」はいるのか?