米上院、非常事態宣言の無効決議 トランプ氏拒否権へ
【ワシントン=鳳山太成】米議会上院は14日、トランプ大統領が「国境の壁」建設費を確保するために出した非常事態宣言を無効とする決議案を可決した。野党・民主党のほか、与党・共和党からも12人の造反が出た。トランプ氏は同日、就任後初となる拒否権を発動すると表明した。民主党との対立が一段と激しくなるほか、共和党との協力にもきしみが生じる可能性がある。
上院(定数100)は非常事態が終わったと認定して宣言を無効にする決議案を59対41の賛成多数で可決した。採決に参加した民主党系議員47人全員のほか、共和党からも有力議員のロムニー氏ら12人が賛成に回った。民主党が過半数を占める下院は2月に同趣旨の決議案を可決している。
トランプ氏は可決直後、ツイッターに「国境を開いて国内の犯罪や薬物、人身売買を増やす、民主党に感化された決議案を拒否するのを楽しみにしている」と書き込んだ。造反には触れずに「何としても必要な壁と国境警備を支持した強い共和党議員すべてに感謝する」と述べた。決議への署名を拒否し、非常事態宣言が無効となるのを阻止する構えだ。
民主党は「議会承認を得ずに壁建設の予算を捻出するのは憲法違反だ」として決議案を出した。共和党からも議会軽視と懸念する声が上がり、トランプ氏の政策に与野党がノーを突きつける異例の事態となった。大統領の拒否権は上下院それぞれ3分の2以上の票があれば覆せるが、現時点では難しいとの見方が多い。
トランプ氏は2月中旬、非常事態を宣言して国防費などから計81億ドル(約9千億円)の壁建設費を2019会計年度予算(18年10月~19年9月)で捻出した。
カリフォルニア州など16州も非常事態宣言の差し止めを求めて提訴しており、議会とは別に、司法が宣言の無効を判断する可能性もある。