海自潜水艦が南シナ海で訓練 初の公表、中国けん制
防衛省は17日、海上自衛隊の潜水艦が南シナ海で護衛艦部隊と訓練したと発表した。13日にフィリピンの西側の海域で、護衛艦が潜水艦を見つける対潜水艦戦を想定した訓練を実施した。実任務に就く潜水艦が南シナ海で訓練したと公表するのは初めて。同海域で軍事拠点化を進める中国をけん制する狙いがある。
安倍晋三首相は17日のテレビ朝日番組で「南シナ海における潜水艦の訓練は実は15年前から行っている。昨年も一昨年も行っている」と述べた。訓練の狙いについては「自衛隊の訓練は練度を向上させるものだ。どこか特定の国を想定したものではない」と指摘した。
南シナ海に派遣したのは海自呉基地(広島県)を母港とする潜水艦「くろしお」。13日までに東南アジア周辺を長期航海中の護衛艦「かが」「いなづま」「すずつき」の3隻と合流した。護衛艦や艦載ヘリコプターがソナー(水中音波探知機)を使って潜水艦を見つける動きや、潜水艦が護衛艦に探知されないように近づく行動を確認した。
訓練場所は中国が南シナ海に設定した独自境界線「九段線」の内側。潜水艦の動向を公表するのは異例だ。くろしおは訓練を終え17日にベトナムのカムラン国際港に入り、搭乗員約80人が同国海軍部隊を表敬訪問した。
中国は南沙諸島の人工島に滑走路を建設したほか、西沙諸島に地対空ミサイルを配備するなど南シナ海の実効支配を進めている。政府はこうした動きに歯止めをかけるためフィリピンなど南シナ海周辺の国と安全保障面での協力を深めている。
潜水艦と訓練した「かが」など護衛艦3隻は、8月下旬から南シナ海とインド洋も含めた海域を長期航海している。8月31日には米原子力空母「ロナルド・レーガン」と、9月7日にはフィリピン海軍と共同訓練した。インドネシアやシンガポールなどにも寄港する。
米国は南シナ海の軍事拠点化を問題視し、中国への軍事的な圧力を強めてきた。南シナ海に軍艦を派遣して中国をけん制する「航行の自由」作戦を断続的に実行している。今年は国際的な海軍演習「環太平洋合同演習(リムパック)」への中国の招待を取り消した。