ウーバーイーツ、配送定額制に勝算 在宅追い風
米ウーバーテクノロジーズが日本国内の宅配代行サービスで配送料の定額制(サブスクリプション)を始めた。一定の注文代金を超えた場合に月額980円で届ける。渋滞情報などデータを分析し、需給に応じ配送料を決める仕組みに定額制を組み合わせる。支出が膨らむ見通しだが、コロナ危機下での在宅拡大で料理宅配に追い風が吹くなか、消費者の囲い込みを目指す。
国内法人のウーバーイーツジャパン(東京・渋谷)が6日から始めた。料理などの注文代金が1200円超の場合に定額制を適用する。
ウーバーのビジネスモデルの特徴は、消費者と配達員、飲食店など店舗の3者を1つのシステムでつないだ点だ。配送料の算出には需給に応じ価格が変動する「ダイナミックプライシング」を導入。配送する時間帯や距離、渋滞状況などのデータをリアルタイムで分析し料金を決めている。
この仕組みに定額制を組み合わせる。ウーバーによると、現在、平均的な配送料の水準は300~400円という。消費者は月に3~4回利用すれば元が取れる可能性が高い。一方、ウーバーは支出が増える見通し。定額制で消費者が払う配達料が減る分をウーバーが配達員に払うためだ。店舗収入に対し35%、配送員に10%を課しているとされる手数料率は変えない。
支出が増える見通しにもかかわらず定額制に踏み切ったのは、コロナ危機で宅配の需要が急増しているからだ。ただし、ウーバーの国内宅配代行サービスはなお投資先行の状態とみられ、収益化が今後の課題となる。ウーバー配達員らがつくる労働組合は「適切な報酬」や「事故の補償」を求め、ウーバーに団体交渉を求めている。事業拡大の一方、配達員への目配せも必要となりそうだ。
国内市場でも「定額制」という言葉はすっかり普及した。家電や自動車、飲食、洋服や化粧品など幅広い分野で定額制モデルが登場している。
ただし、すべてがビジネスとして普及するとは限らない。紳士服大手のAOKIは2018年4月にビジネスウエアの定額レンタルを始めたが、わずか半年余りで撤退した。「運営費がかかる一方で、想定したほど顧客を獲得できなかった」(AOKI)という。トヨタ自動車などが始めた車の定額制サービスもまだ緒に就いたばかりだ。
一方で、動画配信や音楽配信の分野では定額制が定着している。消費者にとって、利点が分かりやすい料金体系となることが、定額制モデルが普及するかのポイントになりそうだ。
今回のウーバーの仕組みは利点がみえやすく、宅配代行の分野では定額制が主流となる可能性がある。ただし、競合の出前館は定額制を導入するか未定としたうえで「配送の質の低下を招かないか慎重に検討すべきだ」(同社)としている。
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