アフリカ南部 大干ばつが経済に深刻な打撃
アフリカ南部が1980年代以来、最悪の干ばつに苦しんでいる。国連によると、農業生産の低下で4500万人が食料不足に直面する。河川の水量不足で「世界三大瀑布(ばくふ)」のひとつ、ビクトリアの滝は干上がった。水力発電に頼る電力の不足は都市生活をまひさせ、鉱山操業にも支障が及ぶ。もともと脆弱な域内各国の経済に深刻な打撃を与えている。
12月上旬、ジンバブエとザンビアの国境に位置する世界自然遺産、ビクトリアの滝は乾いた岩肌をさらけ出した。ザンビア北西部に源を発し、インド洋に注ぐ国際河川、ザンベジ川の水量が大幅に減り、過去25年で最低の水準となったためだ
雨期と乾期がはっきりと分かれているアフリカ南部では過去にも繰り返し干ばつに見舞われてきた。10月から3月ごろの雨期は作物の生育期にあたる。国連食糧農業機関(FAO)によると、過去5年の生育期のうち通常の降雨を経験したのは1度だけだという。
南部アフリカ開発共同体(SADC)によると、2018~19年にかけて、アフリカ南部の広い地域で1981年以降で最少の降雨量を記録した。FAOは「過去35年で最悪の干ばつ」と指摘し、4500万人が「厳しい食料不安」に直面すると警鐘を鳴らす。
特に被害が深刻なのが、穀物生産が前年比53%減ったジンバブエや15%減ったザンビアだ。国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)によると、それぞれ360万人と230万人が深刻な食料不足に陥った。一部の国々は干ばつだけでなく、サイクロンや洪水も含む複合的な異常気象に見舞われている。
干ばつの影響は農村以外にも広がる。ジンバブエの首都ハラレでは断水が常態化し、市民は早朝から水をくむために地域の井戸に並ぶことを余儀なくされている。同国やザンビアではダム湖の水位低下で、銅やコバルト鉱山への電力供給も滞っているという。
アフリカ南部各国は農村人口が多く、1次産品の輸出に依存する。国際通貨基金(IMF)は10月に改定した世界経済見通しで、ジンバブエやモザンビークなどの19年の成長率予測を下方修正した。
アフリカ最大の工業国である南アフリカも7~9月期に前期比年率0.6%減のマイナス成長を記録した。製造業などと並んで足を引っ張ったのが干ばつに見舞われた農業部門だった。
アフリカ固有の要因もある。まず人口増加に伴う森林伐採の拡大が影響した。森林は温暖化ガスを吸収するほか、降った雨をため込む自然のダムの機能も持つ。干ばつによる生活苦や電力不足が違法な伐採に拍車を掛ける悪循環になっている。
加えて、灌漑(かんがい)設備の開発が遅れるなど水資源の有効利用が進んでいない。小規模な農家が多いことも、干ばつの影響を軽減することを難しくしている。ザンビアのルング大統領は自国のような「発展途上国は気候変動に最も影響を受けるが、その結果に対処する能力は最も小さい」と述べている。