金運招くパワースポット 銭形砂絵(香川県観音寺市)
おもてなし 魅せどころ
香川県観音寺市の有明浜に江戸時代の寛永通宝が描かれた「銭形砂絵」。11月に化粧直しが完了し、金運アップを求める観光客らの人気を集める。近くには南米ボリビアのウユニ塩湖のような写真が撮れるとして話題の父母ケ浜(三豊市)がある。バス運行の拡充で相乗効果が出始めている。
瀬戸内海国立公園に含まれる景勝地、琴弾公園(観音寺市)の山頂展望台に立つと、寛永通宝の砂絵が見える。展望台からはきれいな円に見えるが、実際は東西122メートル、南北90メートルの楕円形。2018年度に同公園を訪れた32万人の多くは、この砂絵が目当て。砂絵を見ると、健康で長生きし、金に不自由しないと言われている。
砂絵は1633年に丸亀藩主、生駒高俊公を歓迎するために一夜のうちにできたと伝えられている。だが市の観光MAPなどで「一般には」と断りを入れているように、確かな証拠はないようだ。これが事実だとして、歓迎の意を表すのになぜ銭貨なのか、興味深い謎がある。
高松市に住む家族は11月中旬、年末ジャンボ宝くじの高額当選を夢見て展望台に来た。砂絵を見ていた妻が「これって、崩れないの」と夫に話しかけていた。
実は、この家族が展望台に到着した1時間ほど前に「砂ざらえ」が終わった。市商工観光課の石井盟人・観光係長によると「台風が来ても壊れない頑丈さ」だが、角が丸くなるなど形の崩れは生じる。そこで、春秋の年2回、化粧直しをしている。この日は市民を中心に約400人が参加し、スコップなどを使って寛永通宝の文字を整えた。
観光地としては決して利便性の高い場所ではなかったが、二次交通の充実で追い風が吹いている。高松空港と観音寺・愛媛県四国中央市を結ぶ空港連絡バスが7月から走り出した。
さらに砂絵と香川県三豊市の父母ケ浜などを結ぶバス路線も7月に開設された。父母ケ浜は日本のウユニ塩湖と呼ばれ、干潮時に出現する多数の潮だまりが鏡のようにあたりを映し出す光景が話題を集めている。
バスの運行は三豊中央観光バス(観音寺市)で、中学生以上は1日1000円で乗り放題。11月下旬には通常12人乗りのバスでは乗り切れず、24人乗りに変更と徐々に利用者が増えてきた。香川が誇る不思議な体験スポットが結びつきを強め、独自の観光圏が形成されつつある。
(高松支局 辻征弥)
[日経MJ 観光・インバウンド面 2019年12月23日付]
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