東海道新幹線、休日利用者11%減 新型肺炎影響広がる
JR東海は20日、東海道新幹線の2月1日~19日の利用者数が前年同期に比べて8%減少したと発表した。新型コロナウイルスの感染拡大などで観光客の利用が落ち込んだ。金子慎社長は「ビジネス面の影響は大きくない」としたが、国内出張を自粛する企業の動きが広がっており、名古屋鉄道も新たな対応に追われる。
20日に東京で記者会見した金子社長によると、2月の休日の利用者数の減少幅は11%で、平日より4ポイント多かった。中国からの訪日外国人(インバウンド)の大幅減に加え、国内の観光客の利用が落ち込んだことを如実に物語る。
東海道新幹線の現在の利用者は1日平均約47万人。東日本大震災後の2011年3月に20%の減少幅を記録したが、ここ数年はほぼ毎月、前年同月を上回る伸びだった。今回の落ち込み幅は11年5月と並ぶ8%の大きさだけに、金子社長は終始厳しい表情だった。
ビジネス利用の多い「スマートEX」などのチケットレス乗車サービスは堅調に推移しており、「観光と比較してビジネスの影響は大きくない」としながらも「今後の動向を注視していく」などと述べた。
JR東海では、感染が確認された和歌山県の看護師が乗車した新幹線の座席や洗面所・トイレなどの消毒作業などの対策に追われる。
新型肺炎の感染拡大の影響は他の鉄道会社にも広がっている。
近畿日本鉄道は、3月のダイヤ改正で大阪と名古屋間に登場する新型特急「ひのとり」を大々的にPRする目的で、複数回に分けて計6400人の一般向けの試乗会を予定していたが、19日に中止を発表した。
中部国際空港(愛知県常滑市)と名駅を結ぶ空港線を持つ名鉄は、インバウンドを中心とする利用者の減少に懸念の色を隠せない。感染した人が空港特急「ミュースカイ」に乗車していたことが明らかになったばかり。同社は乗車した編成車両だけでなく、1週間かけ保有する全車両の消毒などの緊急対策に取り組むという。
JR東海系ホテル 中国人客の宿泊キャンセル1億円
新型コロナウイルスの感染拡大の影響は、鉄道会社の関連事業にも広がっている。
JR東海が名古屋市などで運営する系列ホテルでは、中国人旅行客の予約キャンセルの影響額が3月末までの見通しで累計1億円に達した。名古屋駅前のJR名古屋高島屋とタカシマヤゲートタワーモールの売上高は、16日時点で前年同期比6%減まで落ち込んだ。同社の金子慎社長は「訪日外国人(インバウンド)の落ち込みに加え、国内での外出控えが出ている」とする。
名駅前の名鉄百貨店も同じ状況に直面する。「駅や百貨店に集まる人が減り、来店客数は明らかに減少した」(広報担当者)。同店では免税売上高の8割を中国人観光客が占めており、インバウンドの売り上げ減少も懸念している。
中部地銀、特別融資の取り扱い開始
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中部地銀も対策を急いでいる。各行は特別融資の取り扱いを開始し、代替生産などに必要な資金を供給する。物流の混乱などで景気の落ち込みが懸念されるなか、企業の資金繰りを支援する。
各行は感染拡大で影響を受けた際の運転資金のほか、物流や生産の代替費などで特別融資での対応を想定する。名古屋銀行は1月下旬から全店に相談窓口を設け、特別融資の取り扱いを始めた。これまでにホテルや飲食店などから約160件の相談があり、そのうち約1割で融資を実行したという。
日銀名古屋支店は17日に発表した2月の金融経済動向で、中部3県(愛知、岐阜、三重)の先行き判断を引き下げた。「景気の緩やかな拡大が続くとみられる」との表現は維持したが、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえて海外経済の回復ペースの鈍化を勘案した。
清水季子支店長は「複数の金融機関が緊急融資枠を設定するなどセーフティーネットを既に用意している」と指摘。その上で「企業が資金繰りに詰まることがないかを引き続き点検する」としている。
(林咲希、池田将)