G20財務相会議が閉幕 「世界経済に下振れリスク」
麻生財務相、貿易摩擦緩和へ協調訴え
【ワシントン=小滝麻理子】20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は12日(日本時間13日未明)、2日間の討議を終えて閉幕した。中国や欧州などでの景気減速を踏まえて、世界経済の下振れリスクを確認した。議長国を務めた日本は自由貿易の推進を訴えたが、米中貿易摩擦などが長期化するなか、G20の結束には課題が残った。
2019年のG20議長を務める日本にとって今回は初の閣僚級会合となった。今会合は6月に福岡で開く財務相・中銀総裁会議や大阪での首脳会議(サミット)の準備段階との位置づけで、共同声明は採択しなかった。
閉幕後に議長として記者会見した麻生太郎財務相は「世界経済は減速しつつも、19年後半に向けて回復に向かうとの認識で一致した」と述べた。中国の景気刺激策や米利上げ停止の効果が徐々に効いてくるとの国際通貨基金(IMF)の見解に沿った。
ただ、麻生財務相は「(中国などの)主要国の景気減速がほかの国にも波及すれば、世界経済全体の成長率が悪化しうる。リスクは下方に偏っている」と懸念を示した。
共同議長を務めた日銀の黒田東彦総裁も「貿易摩擦など政策の不確実性は高い」と語り、「各国がリスクを十分に認識して、必要ならば迅速に対応する」と述べた。再延期が決まった英国の欧州連合(EU)離脱などのリスクを注視する考えだ。
今回のG20会合は米中の貿易戦争が進行するさなかの開催で、国際協調を演出できるかが注目されていた。日本は貿易摩擦の緩和を図るため、2日目に保護主義の背景にある経常収支の不均衡問題を議論として提案。対中や対日の貿易赤字の削減にこだわるトランプ政権を念頭に、「貿易問題は2国間ではなく、多国間の枠組みで取り組むべきだ」(麻生財務相)と訴えた。
もっとも、各国の貯蓄と投資のバランス改善に向けて具体的なとりまとめをできるかは見通せない。麻生財務相は「6月に向けて自由貿易推進の議論を深めたい」と述べるにとどめた。
GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)に代表される巨大IT(情報技術)企業に適切に課税をする「デジタル課税」の方向性も議論した。仮想通貨(暗号資産)について各国当局がテロ資金供与の防止策で協力することを確認した。
新興国でのインフラ投資のあり方も議論。アジアやアフリカで中国が活発に開発計画を進めるなかで、日本は債務の持続性に配慮した共通ルールを主導する考えだ。
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