新型肺炎が石油需要直撃、10年半ぶり減 IEA予測
1~3月期
【ロンドン=篠崎健太】新型コロナウイルスによる肺炎の拡大が、石油の需要に影を広げている。国際エネルギー機関(IEA)は13日、1~3月期の世界需要が前年同期比で日量43万5000バレル減るとの予測を発表した。四半期ベースで前年を割り込めば米金融危機後の2009年7~9月期以来、10年半ぶりの事態だ。世界2位の消費国である中国の経済混乱が石油市場を直撃する。
IEAは同日発表した月報で「世界の石油需要がコロナウイルスと広範囲にわたる中国の経済活動停止で激しく打撃を受けている」と強調した。コロナウイルスの影響として、1~3月期に世界全体の1%強にあたる日量110万バレル、4~6月期に日量34万5000バレルの需要の押し下げ要因になるとの見通しを示した。
20年通年の世界需要の伸びは日量82万5000バレルと予測し、1月時点から36万5000バレル引き下げた。11年以来の低い水準にとどまる見通しだ。4~6月以降は徐々に正常化に向かうとの前提だが「危機は進行中で正確な分析は難しい」と指摘しており、先行きの不透明感は強い。
IEAの19年の統計によると、中国の石油需要は日量1366万バレルで、世界全体の14%を占めた。需要増加分の4分の3をけん引した。中国ではコロナウイルス発生地の湖北省武漢市などで都市封鎖が続き、工場の操業停止や航空機の減便も長引いている。IEAはガソリン、ジェット燃料など輸送用需要が大きく落ち込むとみている。
石油輸出国機構(OPEC)も12日に予測を見直し、20年の世界需要の伸びを日量99万バレルと1月時点から23万バレル引き下げた。ロシアなど主要な非加盟産油国も含めた「OPECプラス」は1月から、追加で日量50万バレルの協調減産をしているが、需給のさらなる緩みに神経をとがらせている。
2月4~6日にウィーンで開かれたOPECプラスの実務者協議は、日量60万バレルの追加減産を勧告した。新型肺炎が「世界の石油需要と石油市場に悪影響をもたらしている」(議長国アルジェリアのアルカブ・エネルギー相)と懸念を示した。
原油価格の国際指標であるロンドン市場の北海ブレント原油先物(期近)は、10日に一時1バレル53.11ドルと、19年1月以来の安値水準に沈んだ。20年1月8日に付けた直近高値(71.75ドル)から2割以上下げた。米中貿易協議の進展を好感した買いの流れは止まり、OPECプラスの追加減産見通しにも上値は重い。
市場では新型肺炎の発生前から、米国のシェール増産や世界景気の減速などで、20年前半は供給過剰とみられていた。ノルウェーの調査会社ライスタッド・エナジーのビョーナ・トンハーゲン氏は「中国の経済停止は(リーマン・ショックの)08年以来最大の石油需要ショックをもたらす」と予想する。OPECプラスの追加減産も需給均衡には不十分とみている。
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