三越伊勢丹、都心3店集中の勝算 相模原など閉鎖
三越伊勢丹ホールディングス(HD)は26日、伊勢丹相模原店(相模原市)など不採算の3店を閉鎖すると発表した。地方や郊外の店舗は1990年代後半以降減収が続き、訪日客増加の恩恵も及ばない。今後は富裕層などの需要が見込める東京都心3店舗に経営資源を集中し収益力を高める。合理化の成果は出つつあるが、成長へのシナリオを見いだすには至っていない。
新宿、日本橋、銀座で半分稼ぐ
伊勢丹相模原店と同府中店(東京都府中市)は19年9月末に、新潟三越(新潟市)は20年3月22日に閉店する。府中店については営業終了後に商業施設への転換を目指し関係者と協議する。3店合計の従業員853人(4月時点)については原則、配置転換する。
3店はいずれも1996年度が売上高のピークで、直近の17年度の売上高は相模原店がピーク比約5割減の195億円、府中店が4割減の148億円、新潟三越が5割減の129億円だった。専門店モールなどを運営するイオンなどとの差異化が難しく、顧客の取り込みに苦戦した。
一方で、大都市の店舗は堅調に推移している。株式相場が安定して富裕層消費が旺盛なうえ、インバウンド消費も堅調に伸び続けているためだ。
同社の収益を支えるのは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)、三越日本橋本店(東京・中央)、三越銀座店(同)の3店舗。現段階で全23店ある三越伊勢丹HDの百貨店事業の売上高のうち、3店でほぼ半分を稼ぐ。全体の売上高が減少する中で、3店は増加傾向を保つ。
白井俊徳取締役は「新宿や銀座の店舗は他の小売店と差別化が可能。百貨店としても独立した運営ができる」と話す。若者や男性の来客も多い伊勢丹新宿本店の売上高は18年4~8月で前年同期間比4.7%増だった。同社は100億円超を投じて伊勢丹新宿本店や三越日本橋本店の大規模改装に乗り出すなど、3店舗に投資を続けている。
店舗閉鎖は17年、18年は1~2店ずつだったが、今回は3店と踏み込んだ。ただ、地方や郊外でも赤字店は依然残り、同社は構造改革を進める構えだ。今後の閉店について白井取締役は「構造改革すなわち店舗閉鎖ではない」と話しつつも「現時点で決まっていることはない」と含みを残す。
同社では大西洋前社長が多角化路線と地方店の構造改革を進めてきた。16年の記者会見で店舗名を挙げて「不採算店を見直す」と社内への根回しもなく発言。閉鎖するとの誤解が社内に広がって反発を生み、結果的に退任に至る一因になった。
前社長を反面教師にしたが
17年4月に就任した杉江俊彦社長は大西氏とは一線を画し、百貨店事業の再生と関連事業の見直しに重点を置いてきた。高級スーパー「クイーンズ伊勢丹」運営会社の株式売却や、アパレル子会社の清算といった事業の整理に着手。3年間で単体従業員の2割に相当する800~1200人の退職を見込んで、早期退職制度も見直した。
同社の連結営業利益は19年度に過去最高の350億円(17年度は244億円)になる見通し。リストラの奏功に17年度以降の訪日客消費の回復が重なったことが大きい。
ただ、今回の3店舗閉鎖が示すように、杉江氏も大西氏と同様、地方店や郊外店の合理化に着手せざるを得なかった。ネット販売などとの競争が厳しくなる中、結果的に百貨店が利益を捻出する手段が限られていることを表す。経営資源を集中させる都内3店を中心に、稼げる店舗モデルをつくることが杉江体制の課題になる。(岩野孝祐、小田浩靖)