マイナポイント、お得は寝て待て 申し込みは慌てずに
知っ得・お金のトリセツ(17)
マイナンバー大使の任を担う「ゆるキャラ」、うさぎのマイナちゃん(シロウサギの妖精、性格は楽観的、好物はラーメン)もビックリの反響だったに違いない。7月から申し込み作業が始まったマイナンバーカードの普及を狙った実質的なキャッシュバック「マイナポイント」が注目を集めている。
スタートは9月 サービス業者に焦り
だが、買い物やチャージでポイントが付く制度のスタートはあくまで9月から。本来は消費増税対策で始まったキャッシュレス決済に対する2~5%還元が6月末に終わったあと、7~8月はオリンピックによる消費浮揚効果が見込めるため、おもむろに9月に"出動"するスケジュール感だった。
それがコロナ禍でマイナンバーに対する関心が高まったうえ、オリンピックも延期になり経済産業省がやっていたキャッシュレス・消費者還元事業から直接バトンを渡される形になり熱視線を集めてしまった格好だ。キャッシュレス決済業者の前のめりは無理もないが、消費者としては本来のスタート時期、9月までは慌てないのが正しい。マイナポイントは予算上、上限があることは確かだがそれほど簡単に枠が尽きるとも考えにくいからだ。
4000万人の予約枠は簡単には埋まらない
ポイント付与の予算枠2000億円を5000円で割った先着枠は4000万人。公式サイトには「予約者数が予算上限に達した場合、マイナポイントの予約を締め切る可能性がある」と書かれており、総務省も「40,000,001人目は残念ながら……」と明言する。
4000万人は予約の枠だ。ICチップを搭載したマイナンバーカードを取得後に電子証明書を読み込ませて「マイキーID」を発行することを「マイナポイントの予約」と称している。
5日時点のマイキーID発行済み数はおよそ170万。まだ4000万人枠の4%強だ。1週間で倍増し足元で急速に増えているが、まだ余裕があることに変わりはない。「年末までにマイキーIDの発行を受ければ利用できる見通し」(総務省)と説明されているが、計算の根拠は過去のマイナンバーカードの申請件数だ。コロナ下の巣ごもりで申請が急増した5月の実績(1日およそ5.5万件)の倍のペースで申請が増えても5カ月はもつ――というものだ。
ちなみにコロナ以前では1日2万件強がせいぜいだった。暗証番号の設定や本人確認を担当する自治体窓口のボトルネックも勘案すると、倍加するスピードで発行件数が急増し枠が埋まるとは考えにくい。
予備費10兆円の「お財布」
さらに、万一2000億円の予算を使い果たした時に考えられるのが2020年度の第2次補正予算で計上した10兆円という巨額の予備費の活用だ。野党の反発を受け、半分の5兆円については使途の大枠を決めたが残り5兆円の使途は白紙の状態だ。
コロナ禍が長引けば10万円の特別定額給付金の第2弾、第3弾も考えられるなかで、せっかくマイナポイントが枠いっぱいになるほど盛り上がっているのであれば、そのまま「はい、終わり」にするとは考えにくい。
「マイナの陣」で上乗せ続々
さらに賢い消費者として利用したいのがキャッシュレス決済業者が繰り広げている「マイナの陣」だ。還元率は25%の高率とはいえ5000円という上限があるマイナポイントに独自のポイント還元を上乗せする動きが続いている。7月の申し込み開始と同時にいち早く顧客のマイキーIDを自社のキャッシュレス決済口座とひも付けてしまいたいためだ。
例えばメルカリの子会社メルペイ(東京・港)は3日、従来1000円分だった上乗せ還元額を2000円に倍増させた。別途、抽選で総額1億円分の還元も追加するという。各社は赤字覚悟で顧客囲い込みを急いでおり今後も追加の一手が出てくる可能性は高い。
一方でマイナポイントのシステムでは一度キャッシュレスサービスを選んでしまうと変更することはできない。マイナポイントへの参加を表明している110社以上に対して今現在で申し込み手続きができるのは50サービス程度と半分以下だ。全ての「お得」が出そろったところを慎重に見比べて選びたい。
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー編集センターのマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。
幣と硬貨を使わない決済方法で、(1)あらかじめ入金する「プリペイド」(前払い)(2)デビットカードやQRコードなど預金口座から直接引き落とす「リアルタイムペイ」(即時払い)(3)クレジットカードに代表される「ポストペイ」(後払い)――に大別されます。カードに加えてスマートフォンによる決済も普及しています。
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