ロシア北極圏で燃料流出事故、非常事態宣言を発令
【モスクワ=小川知世】ロシアの北極圏にあるノリリスクで火力発電所の付属施設から燃料が流出する事故が発生し、政府は3日、周辺地域に非常事態宣言を発令した。プーチン大統領は事故の報告が遅れたとして地元首長らを叱責し、経緯を調べるように指示した。除染作業が難航し、深刻な環境被害が指摘されるなか、当局は刑事事件として捜査を始めた。
事故は5月29日に資源大手ノリリスク・ニッケル子会社の施設で起きた。燃料タンクが破損し、約2万トンのディーゼル油が河川などに流出した。地元当局は発生の2日後にSNS(交流サイト)の情報を受けて全容を把握したという。3日のテレビ会議で地元首長らから説明を受けたプーチン氏は「非常事態をSNSで知れというのか」と怒りをあらわにした。
会議を受けて政府は非常事態宣言を発令し、国主導で除染作業に乗り出した。施設の担当者を拘束し、土壌汚染などの容疑で調べている。環境保護団体グリーンピースは同日、環境被害が60億ルーブル(約95億円)超にのぼる恐れがあると指摘した。
ロシアではプーチン氏の5選を可能にする憲法改正法案の是非を問う全国投票を7月1日に控えている。過去には地方で起きた事故や災害の対応への不満が政権に向かった事例もある。プーチン氏には事故対応で陣頭指揮をとり、初動の遅れが波紋を広げるのを避けたい考えもあるとみられる。
ノリリスクはシベリア北部に位置し、ロシア有数の工業都市で知られる。事故による死傷者やエネルギー供給への影響は出ていないという。