トルコ、政策金利据え置き エルドアン大統領に配慮か
【カイロ=飛田雅則】トルコ中央銀行は24日の金融政策決定会合で、主要な政策金利である1週間物レポ金利を据え置いた。市場関係者はインフレ対策で利上げを予想していたため、発表直後に通貨リラの対ドル相場は急落。一時は前日終値比4%低い1ドル=4.9373リラに落ち込んだ。引き締めによる景気への打撃を嫌うエルドアン大統領に配慮した格好で、中銀の独立性に対する懸念が市場で高まっている。
政策金利は年17.75%のまま。4月から6月までの間に、緊急を含めた3回の会合で金利を計5%引き上げた。直近の6月会合では1.25%上げており、市場では今回も同程度の幅の利上げが見込まれていた。
中銀は会合後の声明で「国内需要の減速はより鮮明になっている」と指摘し、利上げが国内経済に与えるマイナスの影響を避けるため据え置いた可能性を強く示唆した。
リラの対ドル相場は年初からほぼ一貫して下がっている。米国の利上げ継続でトルコを含む新興国からマネーが流出しているうえ、同国の経常収支の赤字がリラ売りの大きな材料になっている。
通貨安は輸入価格を引き上げ、消費者物価の上昇につながっている。5月に前年同月比12%だったインフレ率は、6月には同15%を超えた。
今回の据え置き決定にはエルドアン大統領の意向が強く影響したとみられている。エルドアン氏はかねて、公然と利上げ反対を表明してきた。
24日に開かれたのはエルドアン氏が7月上旬、改正憲法下で広範な権限が集中する実権型の大統領に就いてから初めての金融政策決定会合。新体制では経済政策の要である財務相に同氏の娘婿をエネルギー天然資源相から横滑りさせた。中銀の総裁、副総裁、政策委員を大統領が任命すると定めた大統領令を出した。中銀総裁の任期は5年間から4年間に短縮した。
エルドアン氏は6月の大統領選で勝利し、同時に実施された総選挙でも同氏を支える与党・公正発展党(AKP)中心の会派が議会(一院制)の議席の過半数を獲得した。エルドアン氏が経済政策の全般に絶大な影響力を行使できる環境は整いつつある。同氏は実権型の大統領に就任する前から「中銀は大統領の指示を無視してよい訳でない」と強調していた。
24日の据え置き決定を受け、主要経済団体であるトルコ産業・企業家協会のチーフエコノミスト、ズムルト・イマモール氏は日本経済新聞に対し「年末までに通貨は対ドルで5~5.2リラ台まで下落するかもしれない」と述べた。予測通りにリラが下落すれば、トルコ企業の外貨建て債務が膨らみ、業績の下押し要因が増えかねない。