住商、石炭火力 ベトナムで着工
住友商事は26日、ベトナムで石炭火力発電所の建設を始めたと発表した。総事業費は約2800億円。石炭火力は二酸化炭素(CO2)排出量が多いため新規建設に逆風が吹いているが、環境負荷が高い従来方式の発電設備を採用する。事業化は2009年に決めていた。現地の電力需給が逼迫していることに対応する。
ベトナムのカインホア省で出力132万キロワットの「バンフォン1石炭火力発電所」の建設を26日に始めた。23年の商用運転開始を目指し、25年間にわたってベトナム電力公社に売電する。住商が発電事業を担当し、発電所のEPC(設計、調達、建設)は東芝やIHIなど4社が担う。融資には国際協力銀行(JBIC)や日本の3メガバンクなどが参加した。
最先端の石炭火力発電技術の「超々臨界圧」に比べ、発電時のCO2排出量が5~10%多い「超臨界圧」方式を採用する。住商では「(超々臨界圧も)検討したが、立ち上げが年単位で遅れる」(広報部)として、従来方式の発電設備を建設する。
住商は09年に石炭火力発電所の開発を決めたが、その後「ベトナム側の契約交渉に時間がかかり、承認手続きが遅れた」(広報部)という。
ベトナムでは電力需要が年率10%ほど伸びている。米中貿易戦争を受けて中国からの生産拠点移転の受け皿にもなっており、電力不足の解消が急務だ。ベトナム政府は現状で約5千万キロワットの発電設備容量を30年までに1億2950万キロワットに増やすとしている。
ESG(環境・社会・企業統治)の観点からは石炭火力の新設に逆風が吹いている。経済協力開発機構(OECD)は石炭火力の建設を抑制するためのガイドラインを定めている。住商は「ガイドラインが適用された17年1月1日までに事業化調査(FS)と環境影響評価(アセスメント)を終えており問題はない」としている。