ロシアガス大手、北極圏LNGで中国から2割出資で合意
【モスクワ=小川知世】ロシアのガス大手ノバテクは25日、北極圏で計画する液化天然ガス(LNG)生産事業で中国企業2社から2割の出資を受けることで合意したと発表した。同事業は仏トタルが1割の出資を決め、日本やサウジアラビアも出資を検討する。ロシアは中国と北極圏の資源開発で連携し、シェールガス増産でLNG輸出を伸ばす米国に対抗する。
ロシア北部で2022~23年に稼働を計画するLNG基地「アークティック(北極)2」事業で、中国石油天然気集団(CNPC)子会社と中国海洋石油(CNOOC)から1割ずつ出資を受ける。北京で同日開幕した中国の経済圏構想「一帯一路」に関する国際会議で合意文書に署名した。出資額は計1兆円規模とみられる。
ノバテクはロシアの民間ガス最大手で、同事業に6割を出資する方針だ。中国からの2割分の出資に加え、日本の三井物産と三菱商事、サウジアラビア国営石油のサウジアラムコとも交渉中とみられる。ノバテクのミヘルソン社長は4月中旬の国際会議で日本経済新聞社の取材に対し「日本側からの良い提案を待っている」としていた。
ロシアは北極圏開発を重要政策に掲げ、政権主導で外国の出資を呼びかけている。プーチン大統領は26~27日に一帯一路会議に出席し、中国との連携強化をアピールする。中国はノバテクが17年に輸出を始めた最初の北極圏LNG基地「ヤマルLNG」にも約3割を出資した。ロシアは対ロ制裁下で開発への資金調達が制限されるなか、中国の参加で実現にこぎ着けた。
ロシアは北極海航路を活用した北極圏LNGの輸送でアジア市場の開拓を急ぎ、LNG輸出を拡大する米国に対抗する。米国と貿易などを巡って対立する中国もエネルギー調達元の多角化を進めており、思惑が一致した。中国は北極圏を一帯一路の一環と位置づけ進出にも意欲を示す。米国は中ロが先行する北極開発に警戒を強めており、今後対立が過熱する可能性もある。