中国、カシミール問題でパキスタンと連携 早期収拾呼びかける
【北京=羽田野主】インド政府が北部ジャム・カシミール州を直轄地にすると発表したことに対し、領有権問題が絡む中国とパキスタンが連携してインドへの非難を強めている。中国もカシミール地方の一部を実効支配しており、静観できない事情がある。ただ、対米貿易戦争を抱える中国は有力な貿易相手であるインドとの決定的な関係悪化は避けたいのが本音で、難しい対応を迫られている。
中国の王毅外相は12日、北京でインドのジャイシャンカル外相と会談した。中国外務省の発表によると、王氏はインドのカシミール地方での実効支配強化を「地域情勢を複雑にする一方的な行動だ」と批判し、反対の立場を鮮明にした。「中国の主権に対する挑戦でもある」とも非難した。
インド政府によると、ジャイシャンカル外相は「インドの内政問題だ」と反論。今回の措置は「ガバナンスの向上と経済発展を目的としている。中国側の心配は間違っている」と主張した。
カシミール地方を巡って領有権を争うインドとパキスタンの対立が激しくなるなか、中国はパキスタンとの連携を強めつつある。
9日にはパキスタンのクレシ外相が急きょ北京を訪れて王氏と会談した。王氏は「パキスタンが自国の正当な権益を守ることを断固支持する」と話し、クレシ外相も「中国とあらゆる方面で連携し関係を深めたい」と応じた。
だが米中対立が激しさを増すなか、中国は地域大国であるインドとの関係悪化は望んでいない。中国はインドで多額の貿易黒字を稼いでおり、中国企業もインドに多数進出している。中国はインドと対立を深めれば、インド洋への中国の海洋進出を警戒してインドに接近する米国を利するとみている。
一方、中国はパキスタンとも広域経済圏構想「一帯一路」などで連携しており、関係は入り組んでいる。王氏は12日のインド外相との会談で「インドとパキスタンは平和的に争いを解決してほしい」と話し、早期収拾への取り組みを呼びかけた。
とはいえ、解決への糸口はみえない。パキスタンのカーン首相は11日、インドの決定に対し「世界はヒトラーが行ったような行為を看過するのか」とツイッターに投稿し、一段と反発を強めた。イスラム教徒が多数派のカシミール地方にヒンズー教徒が流入しやすくなると主張し「カシミールの人口動態を変えようとする試みで、民族浄化だ」とも非難した。