「ゴーン後」の戦略見えず 日産臨時総会
西川体制、厳しい声相次ぐ、時価総額3000億円近く減少
日産自動車は8日、臨時株主総会を開き、刑事事件で捜査が進むカルロス・ゴーン容疑者を取締役から解任した。総会では株主から日産の将来や現経営陣の責任を問う声が相次いだ。自動運転など次世代技術「CASE」で競争環境が変化するなか、日産は出遅れが鮮明だ。「ゴーン後」の戦略がみえない株主の不安を反映し、ゴーン元会長逮捕の2018年11月から時価総額は3000億円近く減少した。世界大手と比べて一人負けが鮮明だ。
「深く深くおわびする」。総会の冒頭、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)は株主に深々と頭を下げた。出席した株主数は4119人と昨年の定時総会に次ぐ過去2番目の多さとなった。
「責任があるなら現経営陣は総退陣すべきではないのか」。約2時間半に及んだ質疑では、西川体制に対する厳しい声が相次いだ。
6月の定時株主総会では、「ゴーン・チルドレン」と評された西川社長が、再任するかどうかが焦点のひとつだ。西川社長は責任を認める一方、「成長軌道にいち早く戻す責務がある」と続投に意欲を示した。ただ日産株を保有する機関投資家のひとりは、「西川社長が入ればゴーン体制を引きずった形に見える。改革のメドが付けば身を引くなど条件付きでないと、再任は賛成しにくい」と慎重だ。
仏ルノーとの提携20年の節目でゴーン時代と決別した日産は企業統治改革を進める。取締役会議長には経団連前会長の榊原定征氏を招くことを検討している。副議長には、この日、日産の取締役に選ばれた仏ルノーのジャンドミニク・スナール会長が就く。
5月下旬の取締役会で榊原氏を含めた取締役候補を選び、6月の総会後の取締役会で榊原氏が正式に議長に就任することが有力視されている。総会では社外取締役が取締役会議長を務められるよう定款を変える。
ただ日産に対する投資家の見方は冷ややかだ。ゴーン元会長が逮捕された昨年11月19日と比べて、日産の時価総額は約2900億円減った。
トヨタ自動車や独ダイムラー、米ゼネラル・モーターズ(GM)など世界のライバルが軒並み時価総額を増やす中、日産の落ち込みが目立つ。
トヨタはソフトバンクと提携し、移動サービスに乗り出した。GMは工場閉鎖など構造改革の一方、自動走行のシェアリングサービスに経営資源をつぎ込む。
一方、ゴーン問題に追われる日産は成長戦略を示せない。23年3月期が最終年度の6カ年の中期経営計画では、17年3月期比3割増としていた売上高の下方修正の可能性が浮上。8%を目標とする営業利益率は未達となるリスクが出ている。
資本関係見直しの問題も棚上げになったままだ。仏ルノーの筆頭株主のフランス政府は、共同持ち株会社によるルノー・日産の経営統合の構想を持つ。一方で日産は自立経営を望み、日仏連合はいまだ同床異夢にある。