スリランカ新大統領、29日にインド訪問 対中接近の懸念払拭狙い
【ムンバイ=早川麗】18日に就任したスリランカのゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が初の外遊先として29日にインドを訪問する。同氏が親中派との見方が強く、中国と領有権問題などを抱えるインドが警戒しているためだ。21日には大統領時代に中国への傾斜を鮮明にした実兄のマヒンダ・ラジャパクサ氏が首相に就任した。大統領のインド訪問で懸念を払拭できるかどうかは不透明だ。
ラジャパクサ氏は大統領就任の宣誓式でも中国やインドと同程度の関係を保つ「等距離外交」を展開する姿勢を示した。
一方、首相に就いたマヒンダ氏は2005~15年に大統領を務め、中国から多額の投融資を得て港湾や空港などの整備を進めた。その結果、南部のハンバントタ港は17年に権益の大半を中国系企業に99年間貸与することになり「債務のわな」の代表例とされた。
マヒンダ氏の大統領在任中には最大都市コロンボの港に中国の潜水艦が寄港し、インドが激しく反発したこともある。
15年の前回大統領選では、マヒンダ氏に造反したシリセナ氏が当選した。シリセナ政権は対中傾斜を改めた。日本とインドが協力してコロンボの港湾開発に乗り出した。
インドでは、ラジャパクサ政権の対中傾斜に懸念がある一方、かつてのような極端な対中接近はないだろうとの楽観的な見方もある。スリランカの対外債務は国内総生産(GDP)の約6割相当に膨らみ、「債務のわな」への警戒が強まっているとの観測だ。「スリランカが(中国傾斜という)歴史を繰り返すとは限らない」と、インドの元外交官アチャル・マルホトラ氏は指摘する。