韓国大気汚染過去最悪 大統領、中国と協議入り指示
【ソウル=山田健一】韓国の大気汚染が深刻だ。韓国環境省によれば、5日のソウルは微小粒子状物質「PM2.5」の1日平均の濃度が1立方メートルあたり135マイクログラムと、1月に記録した同129マイクログラムを上回って過去最悪を更新した。韓国の環境基準の4倍近い数値で市民らは不満や不安を募らせている。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は6日、PM2.5の発生源とみている中国と対策を協議するよう指示した。
世界の大気汚染指数を都市別に公表する民間組織「エアビジュアル」の6日未明のデータでは、ソウルはインドのニューデリーや中国の上海を超えて、世界で最も空気が悪い。ソウルでは昨年来、数百メートル先の視界が白っぽくかすむ日がある。5日は朝鮮半島周辺で発達した高気圧の影響で上空の大気が停滞し、PM2.5の濃度が一段と高まった。
韓国メディアは防毒マスクのような形をしたマスクをつける市民の写真を載せるなどし、連日トップ級でこの問題を伝えている。韓国語で「超微細粉じん」と訳され、これまでホコリの一種と受け止められてきたPM2.5について、韓国環境省が「発がん性物質」と明言したことに市民らの不安は高まっている。
韓国では、中国の工場から出る環境汚染物質や黄砂が偏西風に乗って韓国に飛来しているとの見方が多い。文大統領は6日、関係省庁に「韓国と中国が共同でPM2.5の低減に取り組む方策を出すよう」指示し、一案として人工の雨を黄海に降らせてPM2.5を落とす案に言及した。
ただ人工降雨は1月の実験で失敗しており、文大統領が求める即効性のある対策になるかは不透明。趙明来(チョ・ミョンネ)環境相は、普通自動車の運行規制や経済活動の制限も検討が必要との考えだ。
中国外務省の陸慷報道局長は6日の記者会見で「韓国のスモッグが中国から来たという十分な証拠があるのか分からない。原因や対策には科学的に向き合う必要がある」と述べ、韓国の主張に疑問を呈した。その上で「もし協力できるなら、それは良いことだ」と語った。
文大統領は2017年の大統領選で、大気汚染問題の改善を公約に掲げて当選した。就任から2年近くたつ今、状況はさらに悪化。放置すれば支持率低下の原因になりかねない。保守系最大野党の自由韓国党は「北朝鮮問題があるからか、文政権は中国に強い抗議すらできていない」と批判を強めている。