「香港移民、受け入れるな」中国がカナダに警告
【北京=羽田野主】中国の叢培武駐カナダ大使が、カナダ政府に対し香港のデモ参加者らを難民として受け入れないよう警告し、波紋が広がっている。中国の香港政策を支持しないなら香港在住のカナダ人の安全に影響が及ぶ可能性も示唆している。カナダ政府が反発し両国間の緊張が高まっている。
中国外務省によると、叢大使は15日、中国メディアや現地報道機関の取材に応じた。カナダ政府が香港人の難民申請を受け付けていることを問われて「香港の暴力的な犯罪者らの政治亡命を認めないようカナダ政府に強く求める」と強調した。 大使は「香港にいるカナダ国籍の保持者30万人の健康と安全、香港にたくさんあるカナダ企業を思いやるのであれば、中国政府の取り組みを支持すべきだ」とも発言。カナダが中国政府の香港政策を支持しなければ、香港在住のカナダ人の安全や企業の活動にも影響が出かねないとほのめかした。
香港国家安全維持法は外国人も対象にしている。「企業や団体も対象」と定め、刑事罰を受けた場合は「営業の停止または免許や営業許可証を取り消す」とする。同法違反とされれば、香港でのビジネス継続が不可能となる。
英BBCによると、カナダのトルドー首相は「中国の強制的な外交は容認することができない」と強く反発。「人権のために立ち上がる」と強調した。
両国の関係は、カナダ当局が2018年12月に米国の要請で中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)幹部の孟晩舟氏を逮捕して以降、悪化している。
中国はスパイ罪などでカナダ人2人を起訴した。麻薬製造罪などに問われたカナダ人に相次いで死刑判決を出した。カナダ側に圧力を加えているとみられている。
20日付の香港紙、明報によると、19年に起きた香港のデモ活動に参加した香港中文大の女子学生がドイツに逃れ、難民申請を認められた。昨年の香港のデモ参加者をドイツ政府が難民として保護するのは初めてという。
人権団体は香港国家安全維持法の施行で香港の人権状況が悪化しており、欧州連合(EU)諸国にさらなる難民の受け入れを呼び掛けている。
中国がカナダに強硬な態度にでているのは、香港の「難民」の受け入れが海外に広がり、中国への非難の強まりを回避したい思惑もありそうだ。