NY商品、原油が続落 米中対立の激化懸念高まり、金は大幅反発
【NQNニューヨーク=戸部実華】23日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物相場は大幅に続落した。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の10月物は前日比1.18ドル(2.1%)安の1バレル54.17ドルで取引を終えた。一時は53.24ドルと期近物として2週ぶりの安値を付けた。米中対立の激化懸念が一段と強まり、世界景気が冷え込めば原油需要が細るとの見方から原油先物に売りが膨らんだ。
中国政府が現地時間23日夜、米国が9月から発動する予定の対中制裁関税「第4弾」への報復措置を発表した。原油を含む約750億ドル分の米国製品に5~10%の追加関税をかける。発動されれば、米国産の原油需要に悪影響を及ぼすとの警戒感が広がった。
トランプ米大統領が米東部時間23日午前、ツイッターに中国批判を相次いで投稿すると、米中貿易戦争の泥沼化への警戒感が一段と強まった。「正直に言って我々は中国を必要としていない」と批判し、「我々の偉大な米国企業は中国の代替を今すぐ探すよう命じる」として、米国内での生産を求めた。投資家心理が悪化し、米株式市場ではダウ工業株30種平均が一時745ドルまで下げ幅を広げた。リスク資産とされる原油先物にも売りが波及し一段安となった。
取引終了にかけては下げ幅をやや縮小した。午後に石油サービス会社ベーカー・ヒューズが公表した米国の石油掘削装置(リグ)稼働数は前の週より16基減り、2018年1月以来の低水準となった。需給悪化への警戒感をやや和らげた。
ニューヨーク金先物相場は大幅に反発した。ニューヨーク商品取引所(COMEX)で取引の中心である12月物は前日比29.1ドル高の1トロイオンス1537.6ドルで取引を終えた。米中対立の激化懸念が一段と強まり、実物資産の裏付けがありリスク回避の際に買われやすい金先物が買われた。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は23日、米カンザスシティー連銀主催の年次経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で講演した。世界景気が一段と減速しているとの見解を示し、「景気の拡大を維持するため適切に行動する」と改めて述べた。「利下げについて『政策のサイクル半ばでの調整』との文言は聞かれず、追加利下げを示唆した」(TD証券のダニエル・ガリ氏)と受け止められ、金利が付かない金相場を支えたとの指摘があった。