南シナ海、法の支配重要 日フィリピン外相会談 安保協力推進
【マニラ=加藤晶也】茂木敏充外相は9日、訪問先のフィリピンでロクシン外相と会談した。同国が中国と領有権を争う南シナ海問題を巡り、法の支配の重要性を確認した。フィリピンによる日本の防衛装備品購入でも意見交換し、両国の安全保障協力の推進を申し合わせた。
茂木氏は会談後の共同記者発表で「海上法執行や安全保障などで幅広い分野で協力を深める」と述べた。ロクシン氏は「地域の平和、安定、法の支配の維持のためにあらゆる場を通じて様々な協力をする」と強調した。
会談では北朝鮮の完全な非核化や北朝鮮による日本人拉致問題の解決に向けた連携も確かめた。緊迫する中東情勢を巡っても議論した。
茂木氏はドゥテルテ政権が重視するインフラ開発を後押しする考えを伝えた。両外相はマニラの主要な橋の耐震性を向上させる事業への約44億円の追加の円借款に関する署名を交わした。
この後、ドゥテルテ大統領とも会談し、南シナ海での航行の自由と法の支配が重要だとの認識で一致した。
茂木氏は5日から東南アジアを訪問中でフィリピンがベトナム、タイに続く3カ国目だ。
今回の訪問は安倍晋三首相が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」の推進を訴え、南シナ海問題で東南アジアの各国と懸念を共有する狙いもある。中国は2019年12月、初の国産空母「山東」を海南島の海軍基地に配備するなど軍事的影響力を強めている。周辺海域での中国艦艇の活動も活発だ。
茂木氏は6日のベトナムのファム・ビン・ミン副首相兼外相との会談で、南シナ海の航行の自由の確保と国際法の順守について認識をすり合わせた。7日にはタイのドーン外相とも話し合った。今春の習近平(シー・ジンピン)国家主席の来日を前に日中関係は改善傾向にあるが、日本側は安保面の警戒は緩めない構えだ。