ボクシング中継、ネットが主流に 村田が米国で防衛戦
村田戦はダゾーンとESPNが日米で配信
世界ボクシング協会(WBA)ミドル級王者の村田諒太(帝拳)が20日夜(日本時間21日昼)、米ネバダ州ラスベガスで2度目の防衛戦に臨む。日本ではDAZN(ダゾーン)が生配信し、米国でもスポーツ動画配信サービスESPN+(プラス)で中継される。一方で長くボクシング中継を手掛けてきた米大手ケーブルテレビが撤退を表明するなど、本場米国でもテレビからネットへ地殻変動が鮮明になっている。
「この試合が200万人に近づいているESPN+の加入者増に貢献してくれるといい。日系人にも期待している」。村田をプロモートし、スポーツ専門局のESPNと主催興行の放送契約を結ぶボブ・アラム氏は語る。今回はDAZNの日本法人が村田を協賛することから異例の"相乗り"となるが、特筆すべきはこれまで日米ともボクシング中継の主舞台だったテレビではなく、ネット配信となることだろう。
DAZNは17日、村田も将来の対戦を狙うスター選手のアルバレス(メキシコ)と11試合の独占放送契約を結んだ、と発表した。現地の報道では最低保証で3億6500万ドル(約410億円)と破格の条件だ。日本ではJリーグと10年2100億円の契約で一気に認知度を上げたDAZNだが、米国では9月に事業開始したばかり。まだ米四大プロスポーツと契約できておらず、目玉をボクシングに託した。
これまでもボクシングビジネスは放送権料に支えられてきた。米国では1990年代後半からテレビの視聴課金システム(PPV)が定着。15年に行われたメイウェザー対パッキャオの「世紀の一戦」はPPV購買件数が440万件に上り、興行収入は総計600億円を記録した。
一方、ひと晩の視聴で1万円近くを払うPPVには「ボクシングを一部のコアなファンだけのものにした」との批判もあった。実際、メイウェザー対パッキャオ戦後は総じて視聴率も低迷。数々の名勝負を放送してきたHBOが、年内限りでの撤退を決めた。
若年層に近しく、資金力があるネット系企業はボクシング界にも魅力的だ。DAZNは米国で月9.99ドル、ESPN+も同4.99ドルと手ごろ。アルバレスを擁するゴールデンボーイ・プロモーションズは今年フェイスブックと契約、中規模興行の無料配信を始めた。米経済誌フォーブスによると、1興行25万~100万ドルの放送権料を得る好条件という。
もっとも、こうした動きを「先行投資」と懐疑的に見る業界関係者も少なくない。そのあたりを察してか、村田自身は「僕にとってもDAZNさんにとってもチャレンジングな機会。面白い試合を提供しなければいけない」と話している。(ラスベガス=山口大介)