加賀電子、ランナー救護をIoT支援 マラソン向け
半導体商社の加賀電子は、あらゆるモノをネットにつなぐIoTの通信規格「Sigfox(シグフォックス)」を使ったマラソンランナーの救護支援システムを開発した。ランナーの最後尾を走る車や、自動体外式除細動器(AED)などの位置情報をリアルタイム管理する。マラソン大会を主催する自治体などに売り込む。
シグフォックスは低消費電力で広いエリアをカバーする「LPWA」と呼ばれる通信規格の一種。京セラコミュニケーションシステム(京都市)が国内通信網の整備を進める。今回のシステムは加賀電子が京セラコミュニケーションシステム、電子機器メーカーのSMK、システム会社の神戸デジタル・ラボ(神戸市)と共同開発した。
AEDや最後尾車、ランナーとして参加しながら救護を担うメディカルランナーがシグフォックス通信機能を内蔵した全地球測位システム(GPS)トラッカーを装着し位置情報を集める。それぞれの場所をパソコンやスマートフォン(スマホ)、タブレット端末でリアルタイムにつかめる。
急病やけがが出た際に救護体制を整えやすくなる。最後尾車の位置が分かればマラソン実施の際の交通規制を速やかに解除できる。
システムは10月28日に開かれた金沢マラソンで実証実験した。AEDに37台、メディカルランナーに12台、最後尾車に1台のGPSトラッカーをつけ、急病人の救護に生かした。位置情報データは1分間隔で収集した。蓄積したデータを生かし「次回大会に向け検証に活用する」(加賀電子電子事業部の山田久視北陸営業所所長)。
シグフォックスは携帯回線に比べ通信費用を数分の1以下に抑えられる半面、搭載端末の振動でノイズが出やすいとされてきた。今回の実験で使ったプロトタイプのトラッカーは、車に搭載した場合はほぼ確実にデータを検出できたが、メディカルランナーが身につけた場合は60%ほどにとどまった。端末の設置方法やアンテナの改善といった対策を進める。
加賀電子は従来の半導体売買の仲介ビジネス以外の分野の成長に向け、あらゆるモノをネットにつなぐ「IoT」に向けたネットワーク製品の販売強化を進めている。将来的には成長が見込まれる分野だが、それにはネットワーク網の整備が不可欠だ。スポーツをはじめ応用機会を増やし、対応端末や通信網を普及させるきっかけとする。
(龍元秀明)