ゴーン元会長保釈、検察との対決へ 勾留108日間
日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告(64)が6日、東京・小菅の東京拘置所から保釈された。2018年11月の逮捕以降、勾留は108日に及んだ。全面無罪を主張する元会長は弁護団と共に公判の準備を本格化し、法廷での検察との対決に備える。日産の社内調査による不正疑惑を否定し、新体制の確立を急ぐ経営陣への批判を強める可能性もある。
東京地検特捜部の逮捕によって表舞台から突然姿を消したカリスマ経営者が拘束を解かれたことで、その言動には国際的な注目が集まっている。
保釈条件で、住居は事前に届け出た東京都内の物件を指定されており、海外渡航や事件関係者との接触は禁止された。事前に裁判所の許可を得れば日産などの取締役会には参加できるが、実際に出席を求めるか、許可を得られるかは不透明だ。
東京地裁は5日にゴーン元会長の保釈を認める決定をし、決定を不服とした検察の準抗告も棄却した。ゴーン元会長は6日、保釈保証金の10億円を納付した。
ゴーン元会長は6日午後4時半ごろ、作業服のような服装で帽子、眼鏡、マスクで顔を隠して拘置所玄関に現れ、軽自動車に乗り込んで拘置所を出た。その後、都内の弁護士事務所に入った。
弁護人は6日夜、「回復が必要」として同日はゴーン元会長の記者会見を行わないことを明らかにした。改めて会見の開催を検討するという。
ゴーン元会長は地裁の保釈決定を受けて公表した声明で「私は無実だ。自分自身を弁護することに全力でコミットする」と改めて検察との対決姿勢を鮮明にした。保釈により弁護団との打ち合わせに制約がなくなり、細かい事実関係の確認や検察が開示した証拠の検討など公判に向けた準備を本格化するとみられる。
公判での争点や証拠は今後の公判前整理手続きで絞り込まれる。証人尋問の対象選定などが難航して長引いた場合、初公判は20年にずれ込む可能性もある。
ゴーン元会長は18年11月に特捜部に逮捕された後、日産の会長職と代表権を解かれた。4月の臨時株主総会で取締役も解任される見通しとなっている。仏ルノーの会長職と最高経営責任者(CEO)職は自ら退いた。
日産は西川広人社長兼CEOが主導し、日産、三菱自動車、ルノーの3社連合も既に各トップの合議制に移行。ゴーン元会長が日産などの経営に直接的な影響を及ぼすのは難しいとみられる。
他方、ゴーン元会長は1月30日に拘置所内で日本経済新聞のインタビューに応じた際、自身の逮捕につながった日産の不正調査について「策略であり、反逆だ」と主張。今後、記者会見を開くなどして起訴内容や他の不正疑惑について潔白を訴え、日産幹部らの関与を指摘する可能性もある。
ゴーン元会長は、受領を先送りした役員報酬を開示しなかった金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)と、巨額の不正支出などによって日産に損害を与えた会社法違反(特別背任)の罪で起訴されている。
日産自動車が選択を迫られている。
内田誠新社長のもと、業績をどう立て直すのか、筆頭株主である仏ルノーとの関係をどう再構築するのか。